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食あればワインあり、友あればスピリッツあり 2026年10月

食あればワインあり、友あればスピリッツあり 2026年10月

××月××日 スーパー・トスカンの血筋を引くロゼと、浪速のたこ焼き

近ごろ、私の関心はすっかり「ロゼワインとのペアリング」に向かっています。ロゼというと、どこか若い女性向けの軽やかなワインという印象を持たれがちです。けれども、赤品種から造られる“色をまとった白ワイン”と考えてみると、その楽しみ方はいっきに広がります。今回の主役は、リントッコIGTトスカーナ・ロザートと、大阪のたこ焼き。リントッコを手がけるのは、スーパー・トスカンの生みの親として知られるジャコモ・タキス氏の娘、イラリアです。タキス氏といえば、「ティニャネロ」「サシカイヤ」「ソライア」という三大スーパー・トスカンを生んだ名醸造家。その彼がフィレンツェ近郊に残した7haの畑を受け継ぎ、年間わずか2000本弱という少量で造られるロゼが、この一本です。「鐘の音」を意味するリントッコという名にも、どこか静かな余韻があります。由緒あるトスカーナのロゼを、大阪でたこ焼きに合わせてしまう。これがまた、実に楽しい発見でした。
カベルネ・ソーヴィニョン100%で造られるこのロゼは、わずかに赤銅を帯びた落ち着いた色合い。香りにはバラやリコリスがふわりと立ち上がり、やわらかな酸とミネラル感が静かに広がります。お通しのヒジキや高野豆腐から始まり、主役のたこ焼きへ。ソースの甘辛さ、出汁の旨味、たこの食感を、ロゼが軽やかに受け止めていきます。赤品種から生まれ、白ほど酸が鋭く前に出ないその味わいは、むしろ大人の食卓にこそふさわしい。そんなことを教えてくれた、忘れがたいペアリングでした。

スーパー・トスカンの血筋を引くロゼと、浪速のたこ焼き

××月××日 美味しい鰻には、甲州から造られるワインもよく合う

時々、いえ頻繁にと言ったほうがよいかもしれませんが、私は大好きな鰻をよく食べます。暑さで疲れた日に街を歩いていると、不思議なほど「鰻」の文字が目に飛び込んできます。こんなにうなぎ屋があったのか、ファミリーレストランにも鰻があるのかと、改めて驚かされます。さて、猛暑の日に和歌山へ到着しました。美味しそうなお店をネットで調べ、早速出かけることにしました。店に着いた瞬間、ここなら間違いなく美味しい鰻を食べさせてくれそうだと直感しました。次に気になったのはワインです。東京でさえ、うなぎ屋にワインを置いている店は多くありません。まして和歌山ではどうだろうと、少し不安がよぎりました。最初に頼んだ赤ワインは、なんと室温をはるかに上回る30℃ほどに温まっていました。私にとって、鰻に合わせるワインはカベルネ・フラン系と決めているのですが、ここで贅沢は言っていられません。赤は諦め、白の甲州とのペアリングに挑戦することにしました。
サントリー甲州 日本の白(サントリーフロムファーム)と鰻の蒲焼きを合わせるのは、初めての経験でした。落ち着いた洋梨の香り、味わいは柔らかく、旨味も感じられます。鰻の肝や蒲焼きのタレとの相性もよく、鰻の脂や味わいの濃さをすっと流してくれるところにも感心しました。甲州種と鰻。これは、思いがけない新しい発見です。

美味しい鰻には、甲州から造られるワインもよく合う
田辺由美 プロフィール (JSA認定 シニア・ワインアドバイザー)