シェリー 168 - マンサニーリャ・パサダって?

「マンサニーリャ・パサダ」をご存じですか?パサダは、辞書によると、(花が)盛りを過ぎたとか、(果物が)熟れすぎたとか、要するに最盛期を過ぎたことを意味しています。ではマンサニーリャの場合、パサダとは何なのでしょうか?
マンサニーリャは1964年に、原産地呼称ヘレス・ケレス・シェリーから独立して、原産地呼称マンサニーリャ・サンルーカル・デ・バラメダを獲得しました。シェリーは、その名のもとにフィノを始めとする辛口、ペドロ・ヒメネスのようなごく甘口、そのブレンドによる中間の甘口まで大変多くのタイプを擁しています。なかから、サンルーカルの町で熟成されるフィノのタイプ、つまりフロールと呼ばれる酵母の膜のもとで熟成されるタイプだけを分離独立させたのが、この原産地呼称です。その理由は、サンルーカルは大西洋岸にあり、当時、熟成認定地とされていたヘレス・デ・ラ・フロンテラやエル・プエルト・デ・サンタ・マリアとは異なった気候条件を持つため、フロールのもとで熟成するタイプはサンルーカルならではの特性を持つからというものです。
フロールは微生物なので大変デリケートで、環境の変化が大きく影響します。ヘレスは内陸にあるため寒暖の差が大きく、湿度が低く、気候的に厳しい夏や冬にはフロールの膜が薄くなったり、穴が開いたりします。一方海辺のサンルーカルでは十分な湿度が保てるため、一年中フロールが安定して生育しています。この違いは、ヘレスのフィノとマンサニーリャを飲み比べてみると分かると思います。いずれも辛口でイーストっぽい香りやナッティさはありますが、フィノはシャープで骨格しっかりタイプ、マンサニーリャはフローラルでソフトなタイプというのが大まかな特性と言えるでしょう。
そして、個人的には、サンルーカルのアモンティリャドはシェリーに分類されていますが、マンサニーリャの原産地呼称に入れてもいいのではないかと思っています。それは、もともとマンサニーリャとしてフロールの膜のもとで何年か熟成した後に、フロールを消すための再度の酒精強化もしくはフロールの自然消滅によって酸化熟成に移行したものだからです。
そこで登場するのがマンサニーリャ・パサダです。文字通り解釈すると最盛期を過ぎたマンサニーリャです。一般的なマンサニーリャは平均樽熟期間が3~5年で、これを最盛期とみなしているのでしょう。けれどもそこでフロールが消えてしまうわけではありません。けれども、フロールも年を取るにつれ、だんだん弱ってきます。真っ白だった色がくすんできたり、厚みが減ったり、全面を覆っていた膜に穴が開いたり…。まさに最盛期を過ぎたと言えるフロールのもと、マンサニーリャは空気に触れるようになり、少しずつ酸化が始まります。この状態がマンサニーリャ・パサダです。これがさらに進むとアモンティリャドになるわけです。
マンサニーリャは軽やかでソフトで快いワインです。けれども年を経たパサダはそれに深みや厚みが加わり、複雑さを増しています。パサダを名乗れるのは平均熟成期間7年以上ですが、製品としては10年熟成や12年熟成もあります。
暑い夏はよく冷えたフレッシュなマンサニーリャを、料理も深みを増してくる秋からは年を経て旨味を増したマンサニーリャ・パサダを、ぜひお試しください。
ちなみに7年以上熟成されたフィノはフィノ・ビエホ(古いフィノ)を名乗れます。
