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データで読み解くインバウンドの「飲食・酒」考現学 vol.5

データで読み解くインバウンドの「飲食・酒」考現学 vol.5

訪日客の行動スタイルとナイトタイム—JAPAN

各国からの訪日客はナイトタイム(Night Time)をどのように過ごしているのでしょうか。欧米人は「夜そのものを楽しむ」、アジア人は「昼延長線で夜を過ごす」傾向もあります。今号では、夜、そして昼も視野にナイトタイムの世界を探ってみました。飲食サービス業におけるインバウンドの最前線、いろいろな場面でのヒントなど見えてくるのではないでしょうか。

View1. ナイトタイム(NT)の行動観察

「目的優先」のアジアと「回遊」の欧米

✓アジアと欧米のNTスタイルは目的・対象そのものに違いが見られます。欧米はバー利用、地元客との交流、ライブ・音楽、二軒目(飲食等)利用、夜景観賞とNTを有効に幅広くの気持が強く、アジアは買物中心で、その延長線上に飲食(居酒屋)や夜景観賞などへの行動パターンがうかがえます。

✓こうして見ると個人差はあるものの、欧米は「回遊」派、アジアは「目的優先」派という行動パターンと言えそうです。この差は旅行消費の各項目(下記)の実態にも表れています。

欧米豪はNT市場の牽引役!?

✓旅行消費の中でNTに直結する「飲食費」は国別の違いが見られます。 韓国・台湾など東アジアは1人当たり約4万円、それに比べ欧米豪は7~8万円で、東アジアの約2倍の差があります。  
※飲食、娯楽等サービスのNT消費額は約47%(夜間係数)と推計。

✓滞在泊数(宿泊費)ではアジアと欧米豪はさらに大きな差があります。 欧米豪が約14泊、東アジアは約5泊、単純計算で比較すると「夜を過ごす時間」は欧米豪は東アジアより約3倍も長いことになります。

✓さらに、娯楽等サービス費でも、欧米豪は2万円以上、東アジアは約8千円と大きな差で、欧米の「回遊」派とアジアの「目的優先」派の「お金の使い途」の違いが如実に表れています。この西高東低(欧米vsアジア)の違いは、今後のNT市場(業態)が広く賑わう好要因、好材料になるのではないでしょうか。

✓欧米豪の訪日客の増加はニッポンの飲食サービス(酒場)にとって、従来の「お・も・て・な・し」の気持とともに、国別やタイプ別など、それらにマッチさせたキメ細かな営業、サービスが好感度、満足度につながるはずです。

View2. 訪日・主要国の情報源

「選ばれる」お店の情報タッチポイント

✓大半の訪日客の情報源は従来の雑誌メディアから、Google、SNS、動画サイトなどネットツールが今は主流ですが、アジアと欧米の違いも見られます。英国、米国、豪州はツーリスト系「口コミサイト」派で近年の訪日客増が分かるようです。一方、台湾、韓国は「個人ブログ」派。特に韓国は他者の旅行体験を知りたい+話題に乗りたい、という強い欲求が表れています。

✓また、滞在中に得た情報が、次回の観光先や目的地の選択に大きく影響。欧米客は「口コミ」を頼りに訪問先のストーリー情報を重視して選び、アジア客は流行や人気度の高い特に映像情報(インスタ映え)に反応。

✓この点で、アジアと欧米で異なる関心事に基づく情報発信は基本の「基」でもあります。選ばれる店は情報からサービス対応まで、それぞれの接触場面、つまりタッチポイントを想像した情報の使い分がより決め手となると言えそうです。

スモールサイズ、多彩なタイプの店(業態)に魅かれる

✓NTの過ごし方は従来、居酒屋はアジア圏、バーは欧米圏の傾向もありましたが今は、国籍より旅行の目的、同行者などでお店(業態)を選ぶ理由も千差万別です。

✓米国・英国・豪州はクラフトビール、ウイスキーが楽しめる店、また地元客がいるカジュアルな酒場や飲食店など選択肢もよりワイドです。

✓台湾、韓国、香港などは「居酒屋」が今も人気ですが、SNS等でバーや立ち飲み店にも関心が拡散。とくに20~30歳代の若手が中心層、この年代は訪日客全体の過半数を占める層でもあります。

✓人気の居酒屋などニッポンの酒場は、ニッポン体験が出来るかどうかが選ばれる」初動的スイッチにもなっています。メニューだけでなくサービスもセットになった体験コンテンツが“要”と思われます。

スモールサイズ、多彩なタイプの店(業態)に魅かれる

ニッポンらしさの「文化体験」が訪日客の共通感情として高まっています。「何が体験できるか」という訪日客の心理やニーズ等にどう応えられるか。
これはお店(業態)の大きなテーマであり、具体的には個々の営業、サービスの向上はじめ、客層に見合ったコミュニケーションの工夫、使い分けなどを指しています。以下のデータ、情報が少しでも参考になればと思います。

View3. ニッポン体験(飲食店)の関心対象

“繫華街”はニッポンの文化満載&広がるエンタメ空間

✓「訪れてみたい」店の上位、「ストリートフード」と「居酒屋」が選ばれた理由は「地域の味」や「地元の人との交流」、「多種類の日本料理を食べたい」など、“ニッポン独特”への関心、期待度の高さが表れています。

✓上記表が示すとおり、訪日客がニッポンの居酒屋等を利用する際は自国の日常スタイルとは異なり、ニッポン体験の期待が根底にあります。

✓地元客が多い老舗や大衆的な居酒屋は彼らにとってはハードルもありますが、ニッポン文化満載のエンターテイメント空間で高い期待度を持っているので営業チャンスも多く潜んでいるはずです。

「選ばれる店」と「決済」手段は“表裏一体”

✓訪日客にとって初めて選ぶ・入る店は、言語、決済、通信環境が不安3要素と言われ明暗を別けることにもなります。 もし、日本語メニュー、現金のみ、Wi-Fi無しの店なら、「入り口」で拒んだことに等しく、このリスクを減らすため誘引・案内情報の“見える化”も「鍵」になります。

✓キャッシュレス化が進んでいる訪日主要国。アジアの多くはAlipay(アリペイ)やWeChat Pay(ウィチャットペイ)の利用。欧米は各種クレジットやタッチ決済がほとんどですが、最近の利用実態もご紹介します。

✓訪日客のキャッシュレス決済の利用実態は、クレジットカード72.6%、電子マネー/交通系ICカード30.3%、モバイル17%、デビットカード10%以下と、現金(約90%)が大半でキャッシュレス化は遅れ気味ですが、今後はキャッシュレス化は増々進むでしょう。

✓このような流れを見ると、訪日外国人に対する「決済」方式の問題は、業態と客層(国別など)に応じた「決済」方式の見直しは、今後の営業、サービス面を支える新たなインフラの役割も果たすのではと思いますが、いかがでしょうか。

「選ばれる店」と「決済」手段は“表裏一体”
View4. ナイトタイム—JAPANの強味

「再訪」意向の高さ、NT消費にも好影響

✓「必ず来たい」の割合は総じて高く、英国、台湾、米国、ドイツが80%以上。10年前に比べ大幅上昇。中でも韓国は34→68%と2倍もの伸び率。注目点は、欧米とアジアの再訪理由の違いです。

✓欧米は「文化・地域の体験コンテンツ」の中で酒場も有力なコンテンツです。アジアは短期滞在、リピート回数の多さが関係か目的地、SNS上の話題の場所など、目的と時間に見合った再訪理由がうかがえ、NTの過ごし方もこの延長線上にあります。

ニッポン体験を誘引する情報デザイン

飲食店向けとして訪日客対応の具体例の一部をご紹介します。
a.多言語対応メニュー/写真/翻訳アプリ等
▶まず、店の性格、客層をもとにした言語メニュー化。(日本語onlyもあり)
▶多言語は単なる翻訳ではなく料理や素材の魅力を写真+文字で表現。
▶翻訳アプリは、スムーズな注文以外に満足度アップ。口コミ評判にも影響。

b.指差し絵など“見て分かる”案内サイン
▶言語のストレス解消のため会計、手洗い、ラストオーダー、アレルギー有無など、イラスト付き言語で各テーブルやレジに設置。

c.モバイル注文方式(決済除く)
▶スマホでQRコード~注文。スタッフが外国語を話せなくても正確受注。

d.Googleマップ×口コミサイト利用
▶サイト上の表示順を上げるMEO策。(マップ情報最適化)
▶店名を英語併記、営業時間の正確情報、多言語での口コミ増。

e.SNS(Instagram/Facebook)で世界へ発信
▶ハッシュタグに英語や韓国語、中国語を交ぜ検索ヒット向上。特にショート動画は言語の壁を超えて特徴が伝わりやすいので効果も期待。

✓ニッポンの国策として、訪日外国人を意識したNT(夜間コンテンツ)環境のバージョンアップをすすめており、その柱が「日本の固有性」、「地域との交流」、「親近感」、「最先端」、これはこれからの飲食・酒の“世界”にも通じるテーマではないでしょうか。

こちらの特集は、『コミュニケーション科学研究所』のご協力のもと調査。社名の通り“コミュニケーションを科学する”視点を持ちながら、調査研究をしています。
あらゆる分野において膨大な情報より分析・解析がされ、その実績は多岐にわたります。