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データで読み解くインバウンドの「飲食・酒」考現学 vol.4

データで読み解くインバウンドの「飲食・酒」考現学 vol.4

ニッポン・ブランドの評判と実力

訪日外国人の飲食・飲酒行動は嗜好というより、むしろ実際は理解や納得の側面も多々見られます。この背景には言語はじめ価格、注文方法の不安など、ニッポンならではのバリア(壁)があるようです。今号では、このような側面を通して、ニッポンの飲酒文化、多様なスタイル(業態)を楽しんでもらえるバリアフリー世界へのヒントなどをご紹介します。

View1. 旅行消費に見る「飲食・酒」の関係

安心派・アジア人と体験派・欧米人

✓アジアと欧州の代表的な国の旅行支出(飲食費、買物代等)の消費状況 から「飲食・飲酒」の傾向も見られます。
▶アジア・台湾は消費総額(約18万)のうち飲食費4万(22%)、買物代  6万(33%)で買物比率が高い。
▶欧州・英国は消費総額(約39万)と台湾の2倍以上、飲食費8万円  (21%)は高いとは言え全地域では平均クラス。宿泊費19万円(49%)  が突出してますが買物代5万円(14%)は低めです。

✓酒類もこの消費傾向が当てはまりそうです。「商品そのもの」を価値と するアジア、「飲酒体験そのもの」に価値を見つける欧米。つまり、アジア は購入の実用性、欧米は物語や地域性など文化性、という消費感覚の 大きな違いが見られ、このスタンスの対応が鍵になります。

専門知識より、分かりやすく伝える翻訳センス

✓訪日客にとって日本酒や焼酎はどういう存在でしょうか。  欧米では日本酒はRice Wineではなく、Craft、Tradition、Pairingなど の食文化や食相性で捉え、アジアではPremium、Popular(限定、有名) など、ブランドや話題性が選択軸になる傾向です。

✓清酒の場合、辛口、純米、吟醸などの品種情報は訪日客には分かり づらいので、それよりもフルーティー、飲みやすい、肉料理に合うなど 体感的な表現が理解されやすいと言われています。

✓飲食店などの提供側は専門知識の説明よりも、「どのような好みの人」 「どのような場面に合うか」など一言伝えることで、「選ばれる」確率が 格段に上がることでしょう。

View2. ニッポンの「食」と「酒」の経験、満足度

アジアと欧米の「食」と「酒」の嗜好レベル

✓欧米とアジアの「日本の酒」に対する期待度の違いを見てみましょう。 欧米では未知体験や文化色が強く、酒蔵、職人技、地域性などの物語性 がキーになります。例えば、米国やフランスではSmall Batch(少量生産)、 Craft(手作り)、Terroir(土地個性)などの言葉に関心が高く、台湾 や韓国などアジア圏では安心感や人気度、また限定、SNSで話題など が強く影響しています。

✓これらは食文化の成熟度の違いではなく、意思決定のキッカケとなる 用語の違いを表しています。

✓飲酒シーンでは、欧米圏は地域性や造り手情報、アジア圏は人気ラン キング、おすすめ商品の情報をメインとするなど同じ酒類でも訴求 ポイントを変えることが訪日客の期待度アップに繋がります。

「選ばれやすい酒」の条件やヒント

✓訪日客の間では「良い酒が選ばれる」というより、むしろ「理解できる酒 が選ばれる」傾向があります。ニッポンの人気銘柄が選ばれるとは限り ません。

✓選ばれやすい条件は、「読みやすい名前」「味が想像ができる」「料理 との相性が分かる」「価格が分かりやすい」などが挙げられます。

✓私たちの通常の用語、純米大吟醸、本格焼酎などは日本人には違いや 価値が区別出来ても外国人には難解であることから実際にメニュー選択 の際にNGワードになる場合も生じます。売る情報の前に選びやすく する情報(用語)が第一ではないでしょうか。例えば、「味チャート」や 「初めての方におススメ」などは、相手に応じた見やすい表示方法です。

「選ばれやすい酒」の条件やヒント

お酒に求める価値や嗜好は実に多種多様…だからこそ奥深い、魅力的な世界ではないでしょうか。同じ商品でも選ばれる背景や舞台は異なり、そこには各国の地域・文化に育まれたライフスタイル、そして飲酒文化も表れています。
世界中の熱い視線を集めているニッポン。「お酒」に対する訪日外国人の様々な目線から、ぜひ「お・も・て・な・し」への参考にしてみてください。

View3. 「日本の酒」、どういう存在なのか!?

ニッポン・ブランド(酒類)の評判

✓「日本の酒」に対する印象や評価は欧米、アジアの国々の地域性、文化 との関わりの中で次のような特色や側面などが話題となっています。
▶米国…日本ウイスキーが職人技術、希少性などで高評価
▶フランス…ワイン文化との比較で語られるケースが多い
▶台湾…日本酒や梅酒は親しみやすい高品質な酒として定評
▶オーストラリア…クラフト系スピリッツの関心高く焼酎も人気
▶英国…近年、日本のジン、ウイスキーの評価が急上昇

✓ここに挙げられている印象や評価は、ニッポン・ブランド発信のための 背景とも言えます。各国の見方は「ニッポンのものだから売れる」のでは なく、ニッポンらしさ(独自性)とその背景に関心を寄せていることに 共通点も見られます。ニッポン、そして、その場所(酒場など)でしか体験 できない情報を添えることが付加価値が生まれ、高まる機会では ないでしょうか。

「商品」よりも、「意味」や「価値」の問題

✓訪日客に体験してもらいたい「日本の酒」(清酒、焼酎、ウイスキー、ジン など)は、それぞれ異なる味わいと特徴があり、そして様々な用途まで そのマーケットは多岐にわたります。以下に最近の海外での主な話題を取り上げてみました。

✓「日本の酒」の主なイメージは次の通りです。
①清酒は食とのペアリング、焼酎は多様な原料(麦、芋、蕎麦、他野菜  など)と飲み方
②ウイスキーはプレミアム品で世界評価受賞
③ジンは地域素材の独自製法など。

✓ただし、これらの特徴が実際の飲食店では十分に伝わっていない現実 もあり、この結果「知名度あるブランド」に流れることも多いようです。

View4. 微妙な違いも魅力になる“SAKE”ワード

異文化体験、ストーリー、本物への高い関心度

✓実際の飲食店やサービスの現場における対応面は、正確な翻訳が必ず しも最適ではありません。例えば、「純米吟醸」は、味として伝える表現 「Smooth and fruity sake」とすると、味が想像でき受け入れやすく なります。

✓同じ酒の用語(酒類)でも欧米とアジアでは関心度が異なり、その意味 合いの違い(上図)を理解したサービスも大切だと思います。

✓訪日客は商品そのものの価値より「自分に合うか」が決め手になります。 そのためには直訳・翻訳ではない自然に伝わる「飲みたくなる言葉」に 変換するセンスが求められます。飲食・飲酒シーンでは語学力より、 「伝わる」表現や編集のセンスが営業・サービスのレベルアップへの 要因ではないでしょうか。訪日客は酒を飲みに来ているのではなく、 “日本を体験”に訪れているのです。

飲酒に関わる「体験志向」と「失敗回避」

✓訪日客の「飲食・酒」に関わる嗜好の主な傾向は、既に挙げたとおり 「新しい体験を求める」欧米圏、そして「失敗したくない心理が強い」 アジア圏という見方ができそうです。

✓実際には「初めて日本酒(清酒)を試したい」と思っていても、「味が 分からない」「注文方法が難しい」「そのルールも不安」などハードル が多いようです。

✓そこで有効策の例としては、「少量飲み比べ」「人気No.1」「初めて向け」 などの相手に応じた導線情報になります。「試したい」という動機に 対するリスクを減らすことで結果的には「酒類」のオーダー率アップ にもつながることでしょう。試飲セットや味チャートもその代表例です。

※参考資料: 【View1,2】「インバウンド消費動向調査」(2025,観光庁)-費目別1人当たり消費単価/訪日旅行の満足度/他Webサイト(JNTOレポート、訪日ラボなど) 【View3,4】「海外重点国地域等の日本産酒類の市場調査」(2025,国税庁)/「海外から見た日本ブランドイメージ調査(2023,BIOTOPE)/他Webサイト(訪日ラボ/nippon.com/Reuters等)

こちらの特集は、『コミュニケーション科学研究所』のご協力のもと調査。社名の通り“コミュニケーションを科学する”視点を持ちながら、調査研究をしています。
あらゆる分野において膨大な情報より分析・解析がされ、その実績は多岐にわたります。