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競馬コラム北の国から vol.165

競馬コラム北の国から vol.165

2025年のJRA賞年度代表馬は、同年中にJRAで1走もしなかったフォーエバーヤングが選出された。同様の受賞は1999年エルコンドルパサーに続いて2頭目のことだった。また、1954年に制定されて(JRA主催は1987年から)70年以上の歴史がある同賞において、芝レースで1走もしていない「ダート馬」が年度代表馬に選出されたのも史上初の出来事だった。その意味で、競馬界に大きな変革の兆しが見えた1年だったのかもしれない。

フォーエバーヤングはノーザンファームの生産馬。ノーザンファームは15年連続リーディングブリーダーを圧倒的な差で獲得しているが、フォーエバーヤングの約30億円の収得賞金のうち、JRAリーディングブリーダーの算出に含まれているのは2023年新馬勝ちの720万円だけ。その他の賞金はすべて海外か地方競馬で稼ぎ出している。これまでにはいなかった、まったく異色のJRA所属馬だと言える。

フォーエバーヤングはセレクトセール出身馬で、「ウマ娘」を開発・販売するサイバーエージェントの藤田晋氏が落札した馬だが、2022年1歳セールでの取引価格は税抜き9800万円。同年1歳セールでの1億円以上での取引馬は25頭(このうち藤田氏の落札は4頭)もいた中で、特別に注目されていた馬ではなかったわけだ。だが考えてみれば、これまでも日本の競馬の歴史を変えてきたような名馬は、幼少期から大きな注目を集めていた馬ではなかったことが多い。テイエムオペラオーは北海道10月市場(現在のオータムセール)で1000万円で取引された馬だったし、キタサンブラックは市場取引馬ではなかったが購入代金は350万円だったと言われている。オルフェーヴルは牡馬としては小柄な部類で気性も非常に激しく、父ステイゴールド、母の父メジロマックイーンは当時はまだ種牡馬、ブルードメアサイアーとして目立った活躍をしておらず、サンデーレーシングでの募集価格は6000万円(150万円×40口)と低価格の部類だった。特に小柄だったディープインパクトはセレクトセールで7000万円だったが、これはノーザンファーム生産のサンデーサイレンス牡馬としては最低水準に近い価格だった。

フォーエバーヤングの父はリアルスティール。ディープインパクト産駒でGⅠドバイターフ勝ち馬だが、3歳クラシックは同期にドゥラメンテ、キタサンブラックがいたことで皐月賞2着、ダービー4着、菊花賞2着と善戦はしたものの勝ち切れなかった。立派な成績ではあったが、ディープインパクト産駒の種牡馬が飽和状況だったこともあり、リアルスティールはノーザンファーム生産馬だったものの種牡馬入りに際しては社台スタリオンステーションではなく、日高町のブリーダーズ・スタリオンステーションでの供用となり、初年度種付け料も200万円という格安の設定だった。だがこれが幸いした。初年度にいきなり177頭もの交配が集まり、この中からレーベンスティール(重賞4勝)が誕生。種付け料が250万円になった2年目も176頭と交配して、ここにフォーエバーヤングの母フォーエバーダーリングがいた。その後もコンスタントに交配牝馬100頭超えを続け、フォーエバーヤングの活躍が顕著になった2025年は種付け料500万円で174頭と交配。26年の種付け料は1000万円まで急激に上がっている。いまや日高地区供用種牡馬の中では種付け料トップの地位を確立している。主流父系ではないにもかかわらず歴史的名馬を輩出した点ではブラックタイド〜キタサンブラック〜イクイノックスとよく似ている。

フォーエバーヤングは今年1年現役を続け、27年から社台スタリオンステーションで種牡馬入りすることが確実視されている。今年は芝レース挑戦のプランもあるようで、その結果次第では評価が変わってくるかもしれないが、現時点での「ダート世界一」という看板が種牡馬としてどのような評価を受けるのか注目されている。これまでの日本競馬は、厳密にはJRA競馬だが、芝レース至上主義だった。現在JRAで実施されている平地GⅠは24競走あるが、このうちダートはフェブラリーSとチャンピオンズCの2レースだけしかない。地方競馬の場合、盛岡競馬場のごく一部のレースを除いてすべてダートレースだが、賞金を考えれば芝レース偏重になるのは当然のことだろう。

そのため種牡馬界でも高額種付け料が設定されるのは芝向きの種牡馬となっている。26年の種付け料はキタサンブラックとイクイノックスが2500万円でトップに並び、キズナ2000万円、コントレイル1800万円、エピファネイア1500万円、ロードカナロアとスワーヴリチャードの1200万円が続いている。リアルスティールは1000万円だが、フォーエバーヤングとカナルビーグル以外は芝での活躍馬が多いためダート種牡馬とは言えない。いわゆるダート種牡馬ではナダルとドレフォンが800万円でトップ、これにヘニーヒューズとレモンポップの500万円、パイロとルヴァンスレーヴの400万円などが続いているが、芝トップ種牡馬に比べるとはるかに安い。だがフォーエバーヤングのダートでの実績は、これまでのダート種牡馬とは一線を画すものがある。実績だけを考えればキタサンブラック、イクイノックスと並ぶ2500万円でもおかしくないはずだが、ダート重賞の賞金額を考えるとこの種付け料では一般的な生産牧場が交配を申し込むのは難しい。1500万円程度が妥当なラインとなるが、米国で種牡馬入りすれば2000万円クラスになっても不思議ではない。日本調教馬が米国で種牡馬入りした例は過去にもシーキングザダイヤ、ハットトリック、エーピージェットなどあるが、トップクラスの種牡馬では前例がない。フォーエバーヤングの種牡馬入りがどのような形になり、日本のダート競馬がどのように発展していくのかも注目していきたい。