シェリー 162 - 天ぷらにマンサニーリャ

天ぷらは、寿司と並んで、海に囲まれた日本を代表する料理のひとつと言えるでしょう。旬の魚や季節の野菜に衣をつけて揚げるだけというシンプルな調理法なだけに、新鮮さがものをいう、そして、それを愛でる感覚を持った日本人が愛してやまない、まさにこれぞ日本!という一品です。
けれども、その起源はイベリア半島にあるようです。1549年、日本に初めてキリスト教を伝えた宣教師フランシスコ・ザビエルがポルトガルの船で日本に到達します。その16世紀、天ぷらの元祖、油で揚げる料理が彼ら宣教師たちによって伝えられたと言われています。天ぷらの語源はいくつかありますが、その一つはポルトガル語のtempero(テンペロ)。調味料の意味です。もう一つはスペイン語のtémpora(テンポラ)。キリスト教の四季の斎日のことで、祈祷と断食を行い、その間は肉食を禁じ、代わりに野菜や魚に小麦粉で衣をつけて揚げた料理を食べていたとのことです。
そうしてみると、シェリーのフィノの妹分、マンサニーリャの熟成地、サンルーカル・デ・バラメダ(略してサンルーカル)はまさに天ぷらの発祥地のようなところです。サンルーカルからは1519年、世界一周を目指してマゼラン一行の5隻の船が出航しています。3年後、戻ってきたのはエルカノ以下18名を載せた1隻のみでした。サンルーカルは、レコンキスタ完了後のスペイン王国が拠点としていた内陸の大都市セビーリャまで船が上れる大河、グアダルキビール川が大西洋に流れ込む河口にあるため、こういった遠洋航海の出発地点であり、近郊のワインが山ほど船に積まれていっていました。
そんなサンルーカルは今、マンサニーリャと共に新鮮なシーフードのメッカとして大人気のビーチサイド・スポットになっています。その得意料理と言えばペスカイート(標準語はペスカド)・フリート。魚のフライです。合わせるワインは当然ながらマンサニーリャです。スッキリ、シャッキリした辛口で、軽やか。塩っぽさがあって、少し苦みが感じられるという、まさに揚げ物を食べた後の口の中をスッキリさせる効果抜群のワインです。
フリートと天ぷらとの大きな違いの1つは衣です。小麦粉、卵、冷水で作る日本の衣はボリュームがありますが、スペインでは小麦粉だけのことが多く、表面に粉を叩く程度の唐揚げ感覚です。揚げ油は個性がまったく異なるゴマ油対オリーブオイル。フリートに使われる魚はカタクチイワシを始めとする小魚丸ごと、大きな魚の一口サイズ、マリネしたサメなど何でも。イカ各種やエビも揚げます。つい最近サンルーカルで食べたフリートの盛り合わせにはイソギンチャクも入っていました。カキのような磯臭さ、独特の食感とほろ苦さがあり、マンサニーリャと合わせれば抜群のおいしさです。
マンサニーリャはアルコール度15%で、日本酒とほぼ同じです。これまで天ぷらで日本酒を飲んでいらした方、ぜひ一度マンサニーリャもお試しください。淡麗辛口!一口めで口の中がすっきりして、次の一口がさらにおいしくなること請け合いです。
天ぷらには、その故郷のワイン、マンサニーリャをどうぞ。
ちなみに、写真のマンサニーリャは量り売りをレストランで瓶に入れたものです。まさにサンルーカルの地酒です。
