データで読み解くインバウンドの「飲食・酒」考現学 vol.1

インバウンド消費の“現在地”
今号から新シリーズとして、インバウンド(訪日外国人)の飲食や飲酒に関わる話題やデータをご紹介します。
外国人たちのニッポン感をはじめ、滞在中の時間の過ごし方(行動)やお金の使い途(消費)などから、人×モノ・コト×情報がどう関わり合っているのか、また、そこでの心理的な側面にも目を向けたいと思います。
では、最初に日本におけるインバウンドの全体像をダイジェストします。
参考資料:観光庁インバウンド消費動向調査2026/Euromonitor2023観光都市/JNTO市場規模調査2025 /他WebサイトCyberAgent等
インバウンド消費は今、どう動いているか 1人当たりの支出が上昇・円安の影響も大
拡大・成長期にあるインバウンド市場
訪日客数全体の約85%がアジアの国々、旅行消費額もアジア上位5カ国(中国、台湾、韓国、香港、タイ)で全体の約57%を占めています。

2025年の訪日客数・消費額は過去最高を更新
年間の訪日ツーリスト数は約4,300万人、消費額は約9兆4,500億円、10兆円目前の市場です。これに伴い宿泊数も好調となり、2025年1~10月までの地方部の宿泊者数は、台湾や韓国、欧米、豪州、東南アジア各市場で2019年同時期を上回っています。特に米国やカナダ、欧州も2019年同時期比200%超えの大増加。これは市場の多様化も背景のようです。昨年は、中国・東アジアで70%(2019年)を占めていた客数が、65%に縮小。他方、欧米・豪州・中東は14%から18%に拡大と多少変化も見られます。

世界から見た、観光都市ニッポンの存在
拡大一途のインバウンド市場をどう見るか
昨年4,000万人を突破し急増傾向の訪日ツーリスト。5年後は1.5倍の6,000万人、消費額は15兆円との試算も。数年前(2023年時)観光収入額では世界10位ニッポンもランク上昇中です。

世界の旅行市場の広がり、そして“隠れた主役”
世界の高付加価値旅行(1人当たり着地消費額100万円以上)=「富裕層」を中心に、旅行で得られる体験に投資する層の市場は19年の18兆円から21兆円に拡大。旅行者数も873万人から1,157万人へと増加(32.5%の伸び)しています。(下表参照)
世界市場を大きく超える訪日「富裕層」の存在
コロナ以降の19年と23年の4年間の比較で、世界と日本の旅行市場を「富裕層」で見ると明らかな違いが見られます。訪日市場の伸び率が世界市場を大きく上回っています。 23年、訪日市場での「富裕層」は59.0万人で19年比+83.2%。同年の世界市場は1,157万人で19年比+32.5%、明らかに世界を大きく上回っています。ちなみに消費額全体に占める「富裕層」割合では、19年14% 、23年19% と少し上昇ですが、その影響は大きいと言えます。

ニッポンの「飲食」文化は既に、名実ともに世界ブランドと言えそうです。
この「飲食」には居酒屋やバーなどいろいろな“酒場”も含まれるのが、ニッポンならではです。訪日ツーリスト1/4人が日本産のお酒を土産購入のデータもあります。「飲んで・試して」~「気に入ったモノ(コト)を持ち帰りたい」という心理の表れではないでしょうか。
この心理面にも目を向けたいものです。
参考資料:観光庁インバウンド消費動向調査2026/東京都「外国人旅行者調査」2019、2024/PR TIMES調査レポート2025/他、Webサイト(訪日ラボ等)
アジア、欧米等の主要国の消費傾向 旅行支出の中の「飲食費」(飲酒代含む)
旅行支出3本柱、「宿泊」・「買い物」・「飲食」
最近(2025年)のアジアや欧米の旅行消費の傾向や特徴を見てみました。実際はお国柄や個人の所得の違いなどが関係してきますが、統計的には次のような実態です。 費目別トップ国は、宿泊は英国(19.3万)、買い物はシンガポール(10.1万)、飲酒含まれる飲食は3ヶ国(オーストラリア、イタリア、スペインの8万円台)がトップクラスです。買物トップ常連国の中国は今回は2位(9万)です。


旅行支出は、ニッポンに「近い」or「遠い」も相関!?
国別の支出総額は、ドイツ、英国、オーストラリアがトップクラス(39万円台)。平均(22.8万)と比べ約17万の差です。他方、支出額が最も低いのは韓国(10.5万)、宿泊数も影響かと。平均9.5泊に比べ韓国は半分以下、アジアで一番少ない泊数、これは日本に「近い」ことも関係してそうです。
インバウンドを「一括りにはしない」…見方も大事
特定の国をイメージしたインバウンド対応や商戦は国際社会の環境変化に左右されやすい市場です。異なる国々の消費傾向やニーズより、むしろニッポン独自なモノとして、心が通い合う場・コトへの視点が大事なのではないでしょうか。
“酒場”にとって、インバウンドは追い風
飲食・飲酒シーンの心象風景を探る
訪日ツーリストにとってニッポンの食文化は消費の大きなボリュームゾーンです。その点では”酒場“も夜間経済の受け皿としてポテンシャルは大です。そのヒントは各国・訪日ツーリストたちの様々な声にも垣間見られます。例えば、数字では分かりにくい下記の声(ポジとネガ)なども、そのヒントになります。
【飲食店(居酒屋等)】 ●ポジティブ ▲ネガティブ
●大皿1人1品が当たり前のレストランだが、居酒屋は大・小皿が楽しめる (イギリス)
●居酒屋はアイドルタイム=隙間時間にも利用できていい(アメリカ、 イギリス)
●日本の伝統と新しい雰囲気もある居酒屋、小さなBarという感じが 好き(シンガポール)
【料理・飲み物】
●地域の有名料理が楽しめるところが良かった(アメリカ)
●色々な一品料理とアルコールも沢山選べる、バーもリーズナブル(中国)
▲最初の「お通し」が料理代金に含まれるとは知らず困った(アメリカ、 イギリス)
【サービスやスタイル】
●「飲み放題」は日本独自で楽しい(アメリカ、イギリス)
●様々なスタイルの日本食を一度に楽しめるテーブルサービスがいい (イギリス)
●居酒屋で騒いでも怒られないしスタッフが親切。
▲自分の国では無料サービスの「キムチ」が有料は残念、だまされた ような印象もあった(韓国)

訪日ツーリスト約半数は日本酒や焼酎など“日本の酒”も飲みます。米国や豪州で5割を超える一方、中国は少し少なく4割程で酒文化への関心度の差が表れています。 国別で見たある調査では、韓国はビール(34%)が1位、次いでハイボール(20%)。香港もビール(32%)が多く占めています。他方、台湾は日本酒(15%)やカクテル(14%)の割合が比較的高いです。 また、日本でビールを「飲む・購入」の決め手は、「味の好み」が最も多く、他は「日本らしさ・ローカル感」、「限定品や季節限定」などもビールを選ぶ決め手になっています。
こちらの特集は、『コミュニケーション科学研究所』のご協力のもと調査。社名の通り“コミュニケーションを科学する”視点を持ちながら、調査研究をしています。
あらゆる分野において膨大な情報より分析・解析がされ、その実績は多岐にわたります。