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競馬コラム北の国から vol.161

競馬コラム北の国から vol.161

 この原稿を執筆しているのは9月中旬だが、依然として暑さの厳しい日が続いている。人間にとってもつらい夏だったが、大半が北海道生まれで暑さに弱いとされるサラブレッドにとってはなおさら厳しいシーズンだった。今年は7月中旬から8月中旬まで新潟、中京競馬場で「暑熱対策競馬」が行われ、第5レース終了後に3時間以上の休憩時間が設けられた。6〜8月で熱中症と診断された馬は今年は26頭で、昨年の35頭、一昨年の46頭から減少しており、レース時間帯変更だけでなく大型扇風機やミストファンなど各種暑熱対策が一定の効果を示しているのは確かなようだ。  

一方で、メインレースが第7レースという通常とは違う流れに戸惑ったファンも多かった。いずれは慣れるのかもしれないが、メインレース後は最終レースという流れが定着しているので、9〜12Rを購入する気力が続かないという声も聞かれた。ただ暑熱対策期間の売上は前年対比103・2%となっており、売上自体に悪い影響はなかったようだ。パドック周回時間が短縮されたのは賛否両論で、10分間6〜7周の周回が5分間3〜4周に短縮されたことは馬の負担軽減にはなっただろうが、パドック派の観客にとっては時間が足りないと感じたかもしれない。特に「先出し」の馬は2〜3周で本馬場に入って行くため、気が付いた時にはもういなかったというケースもあったはずだ。  

地球温暖化は年々進行しており、今年は北海道でも本州以上の暑さを記録した日があったし、札幌では真夏日(最高気温30℃以上)を35日も記録した。北海道はエアコンなど空調設備が本州ほどは普及しておらず、競馬場内の厩舎にもエアコンがなく、設置完了にはまだ2年程度かかるという。各厩舎では持ち運び可能な冷風機を持ち込むなど独自に暑熱対策を行っていた。それでも朝晩は本州に比べるとかなり過ごしやすく、北海道遠征から戻った騎手らは「北海道は良かった」と口々に話していた。普通に考えればこの北海道開催を延長することが最も簡単な暑熱対策となるはずだが、JRAは来年も北海道開催を13週(函館6週、札幌7週)26日間しか組んでいない。2011年までは6月から9月(10月1週目までの年もあった)まで16週32日間の開催だったものを短縮して、そのままの開催日数(札幌競馬場改修の13年を除く)が続いている。その理由としてやはり売上面やコスト増が考えられる。北海道開催は4大場(東京、中山、阪神、京都)に比べると売上が大きく落ち込む。特に秋シーズンに突入している9月は顕著だった。当日輸送ができないため高額条件レースを多く組むことが難しい上、フルゲート頭数も少ない。馬の輸送コストもかかるし、厩務員や調教助手の出張コストもかさむ。馬の輸送はJRA持ちだが、人の出張は馬主持ちであるため、北海道開催を使いたがらない馬主もいる。巨額の利益を上げているJRAだが、農水省外郭団体の特殊法人であるJRAは年間3500億円を超す国庫納付金を納めることがその大きな存在意義であり、民間企業以上に1年でも売上を落とすこと、コストを増加させることは許されない立場にあるのだ。だから「夏場は休催すれば良いのに」などのファンの声は当然聞き入れられることはない。  

北海道開催の増加が難しいのなら、地方競馬のようにナイター開催をやれば良いのではないかと多くのファンは考えるだろうが、これに関してもJRAの腰は重い。昨年9月の定例会見でJRA総合企画担当理事が「暑熱対策を考えるにあたってまずナイター開催から検討をスタートしたが、①馬主や関係者、マスコミに移動や輸送、滞在の面で大きな身体的、金銭的負担を強いること②ウインズ、パークウインズ等の施設で土日夜間における近隣住民の理解を得るのが困難であること③地方競馬への影響面の考慮④開催に必要な人員の確保が困難なことから現実的ではないという結論に達した」と説明した。  

確かに早朝から調教など馬の世話をする厩務員、調教助手らのナイター翌日の負担は大きくなる。開催場やウインズ周辺の住民対策も必要になるだろう。地方競馬への影響に関しては、夏季に土曜・日曜開催をしているのは盛岡、高知だけで、盛岡は昼間開催なので影響はまったくないだろうし、高知に関しては発走時間を調整すればウインウインの関係を構築することもできるはずだ。人員確保に関しては、どの業界もいまは人手不足だけに困難な面はあるかもしれないが、いずれもJRAが本気になれば実現不可能というものではないようにも思える。ぜひもう一度、ナイター開催実現へ向けた検討を行ってもらいたいと思っている。  

そして究極の姿は「ドーム競馬場」建設だろう。プロ野球も12球団のうち6球団がドーム球場を本拠地にしている。ドームにすれば全体の空調管理が可能になる。東京ドーム10個分以上になる競馬場のような広大な面積をドームで覆うことは夢のような話ではあるが、野球場ほどの高さは必要ないので、いずれは技術的に可能になるかもしれない。広大な芝の育成・管理も日光なしで可能になる時代も来るだろう。世界初のドーム競馬場が日本で建設されたらどれほど楽しいか、生きているうちにぜひ見てみたいものだ。