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競馬コラム北の国から vol.158

競馬コラム北の国から vol.158

 日本ダービーはキタサンブラック産駒クロワデュノールが優勝した。昨年6月の東京・新馬戦(芝1800メートル)を1分46秒7の同コース新馬戦の最高タイムで快勝した時点で「来年のダービーはこの馬」との評価を受けており、その後も東京スポーツ杯2歳S、ホープフルSと楽勝で連勝。その時に破った相手がサトノシャイニング、ジョバンニ、ファウストラーゼン、ミュージアムマイル、ピコチャンブラックなど後に重賞制覇する強豪だったことから、クロワデュノールはホープフルSから皐月賞までレースを遠ざかっていたのに、その評価は日増しに高まっていった。そして迎えた皐月賞は単勝1・5倍の1番人気。4か月ぶりの実戦でもあり厩舎、主戦の北村友一騎手ともプレッシャーは半端ないものだったことだろう。先行馬が総崩れになる厳しいペースでも人気を背負ったクロワデュノールは好位を取りに行かねばならず、直線も早めに先頭に押し出される形となり、ゴール前でミュージアムマイルの末脚に屈して2着に敗れた。だが「負けて強し」のレース内容でもあった。それから1か月半後の日本ダービーでも皐月賞馬を差し置いて単勝2・1倍の1番人気。レース内容も皐月賞同様に先行策から早めに先頭に立つ積極策で、皐月賞3着馬マスカレードボールの追撃を振り切って、横綱相撲でダービーを制した。  

同じ父キタサンブラックを持つあのイクイノックスも、皐月賞馬ソールオリエンスも勝つことができなかった日本ダービーを制したクロワデュノールの未来は極めて明るい。血統的にも奥手だし、馬体を見てもまだ完成途上の印象を受ける。イクイノックスも2、3歳時はまだヒョロっとしていて素質の高さだけで走っていた印象だったが、4歳になって無敵の強さを誇った。イクイノックスと馬体が良く似ているクロワデュノールも、古馬になってさらに鉄壁の強さを見せてくれるに違いない。  

そのクロワデュノールはキタサンブラックの4世代目産駒となる。1世代目からはイクイノックス、中山グランドジャンプを制したエコロデュエル、フェブラリーSと安田記念でともに2着の二刀流ガイアフォースなど。2世代目からは皐月賞馬ソールオリエンス、ダービーで非業の死を遂げたスキルヴィングなど。3世代目は重賞勝ち馬はまだクリスマスパレードとアドマイヤマツリの2頭だけだが、4世代目はクロワデュノール以外にもサトノカルナバル、ピコチャンブラックと早くも3頭の重賞勝ち馬が出ている。この種牡馬成績だけでも十分にすごいのだが、キタサンブラックはこの4世代目が種付けされた2021年時点では、馬産地ではそれほど注目されていた種牡馬ではなかった。  

キタサンブラックは現役時代に20戦12勝。GⅠ・7勝を挙げ、総収得賞金18億7千万円を稼ぎ出した歴史的名馬だったが、父ブラックタイドはGⅠ未勝利で「ディープインパクトの全兄」という血統背景が種牡馬入りのきっかけだったし、キタサンブラック以前には目立った活躍産駒がいなかった。母シュガーハートは未出走馬。やや奥手のステイヤーとのイメージもあり、テイエムオペラオーやメイショウサムソンと同様に種牡馬としては人気が出るタイプではなかったのだ。そのため初年度からの種付け料推移は500万円、400万円、400万円、300万円と、超一流種牡馬が勢ぞろいする社台スタリオンステーションの中では下位の部類だった。種付け頭数も130頭、110頭、92頭、102頭と、200頭を越す種牡馬もいる中ではそれほど多くはなく、集まってきた繁殖牝馬も決して一流揃いとは言えなかった。初年度産駒のイクイノックスが2歳時(21年秋)から活躍していなかったら、5年目はさらに種付け頭数が減り、社台スタリオンステーションに居場所がなくなっていた可能性もあった。クロワデュノールの母ライジングクロスが種付けされたのは種付け料が300万円だった年。ライジングクロス自身は英国GⅡ勝ち馬で、英オークス2着、愛オークス2着の実績を持つ名牝だったが、クロワデュノールの兄姉10頭のうち活躍したのはフラワーC2着など3勝のアースライズ程度。高齢になっており、この時点ではノーザンファームの中で期待されている繁殖牝馬とは言えなかった。  

だがイクイノックス以降の産駒の大活躍で、5年目以降の種付け料は500万円、1000万円、2000万円と年ごとに倍増。種付け頭数も178頭、242頭、191頭と大きく増え、交配牝馬のレベルも飛躍的に高まっている。種牡馬入り初年度から期待が大きかったドゥラメンテ、キズナ、エピファネイアらよりも伸びしろもケタ違いに大きいはずなのだ。  

キタサンブラック産駒の大きな特徴はトモ(腰から尻)の筋肉量が豊富で、脚元が丈夫なこと。車で言えば後輪駆動で、スピードに乗るまでにやや時間が掛かるが、グイグイ加速していく。そのため器用さを要する小回りコースはあまり向いていないが、東京競馬場のような直線の長いコースならケタ違いの末脚を発揮する。ダービー、天皇賞秋、ジャパンCに今後、何頭も勝ち馬を送り出すことだろう。超一流繁殖牝馬と多数交配された5年目以降からどんな産駒が登場してくるのか、いまから楽しみで仕方がない。