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シェリー 161 - イングリッシュな甘口シェリー

シェリー 161 - イングリッシュな甘口シェリー

 クリームはお好きですか?シェリーのクリームです。生クリームではありません。とはいえ関連があります。  
シェリーでクリームと言えば、ブランデー色のまろやかな甘口タイプのものを指します。基本は辛口タイプのオロロソと、ごく甘口タイプのペドロ・ヒメネスのブレンドです。  
かなり前ですが、アメリカの東海岸にあるボストンという町のバーで「シェリーありますか?」と聞いたら、もちろんですという感じで、嬉々として、大きめのブランデーグラスに氷とともに入れられた琥珀色のほのかに甘い飲み物を出してくれました。快い飲み口でアルコール度低めのカクテルといった感じです。当時、ボストンのバーでシェリーと言えばクリームで、ロックで飲むのが普通だったのでしょう。そして今でもシェリーといえば、クリーム・オン・ザ・ロックなのかもしれません。  
アメリカはシェリーの総輸入量の約70%が甘口という甘口市場です。似ているのがイギリスです。アメリカがイギリスから独立して建国されたこと、そしてボストンがそのニューイングランド地方の中心都市だということを考えると、シェリー=クリームは納得できます。何と、本国イギリスは甘口タイプがシェリー全体の85%を占めています。生産国スペインや日本は全く反対で、どちらも辛口が約80%です。  
シェリーは12世紀にはイギリスに渡っていました。スペイン南部、アンダルシアの西の端のヘレス地域で造られたワインは樽に詰められ、船でイギリスに送られていました。シェリーの輸入港として知られていたのが南西部にあるブリストルです。ここで輸入販売業者に引き取られたシェリーはまだ辛口です。それを販売するに当たり、イギリス人好みにブレンドし、できたのが甘口シェリーです。 大英博物館には1634年に書かれた甘口シェリーの資料が残っています。その名は「ブリストル・ミルク」。甘口シェリーの代表的なタイプ、クリームではなくミルクです。  
なぜミルクなのかというと、「この町ではこんなワインが乳児に与えられる最初の液体なので、ミルクと呼ぶ人もいるでしょう」とのこと。それほど美味しく飲みやすいワインとして愛されていたのでしょう。1796年創業のブリストルのワイン商ハーベイズも、もちろん「ハーベイズ・ブリストル・ミルク」をブレンドし、販売していました。  
1880年代、ハーベイズはあらたな商品開発をしていました。その試作品を来訪した女性に試してもらったところ、「前のがミルクなら、これはクリームね!」という素晴らしいコメント。ということで、1882年、新製品は「ブリストル・クリーム」と命名され世に出されました。ミルクとの違いはワインのベースに使われたオロロソです。クリームには熟成期間が長いオロロソが使用されていました。こうしてクリームの評判が高まっていく陰でミルクは消えていきました。  
メーカーのハーベイズは現在フンダドールというブランデー主体の会社の傘下に入り、シェリー部門を担うブランドになっています。そして、ブリストル・ブルーと呼ばれる美しいコバルトブルーのボトルに入った「ハーベイズ・ブリストル・クリーム」は甘口シェリーのベスト・セラーとして世界中で愛飲されています。  
クリームのオンザロックはイギリスやアメリカだけでなくスペインでも、そして、もちろん日本でも、特に春から夏にかけてはお勧めの飲み方です。

明比 淑子 氏