シェリー 160 - シェリーはコミュニケーションのアペリティフ

マドリードの地下鉄では、東京の地下鉄ほどではないですが、スマホに没頭している若者がけっこういます。そしてコロナの後、バルやレストランのメニューがQRコードになったところが多く、テーブルにはコースターのごとく普通にQRコードの紙が置かれていたり、小さなスタンドにQRコードだけが入っていたりします。スマホがないとバルでコーヒー一杯飲めなくなるのではないかと思うと、寂しいです。
スペインと言えばバル。BARと書いてバーではなく、文字通りバルと発音します。日本のコンビニのごとく、どこにでもあるバルはスペイン人の生活の必需品です。
かつて、スマホが存在しない、私が学生だった頃、大都会マドリードでも、だいたい誰もが家の近所に行きつけのバルを持っていて、毎日のように顔を出してはコーヒー一杯とかワイン一杯とかで、カマレロ(サービスの人)と挨拶を交わし、いつも顔を合わせる人たちと、どう?元気?とか他愛のない話をしながら、ひとときを過ごしていました。バルは生活の一部であり、情報交換の場でもありました。
最近、大都会は観光化が進んだため、こんな場面は少なくなっているかもしれませんが、中心部を離れれば、スペインのバルはまだ健在です。
シェリーの本場ヘレスも観光化は進んだものの、バルは昔のまま、“正常に”機能しています。午後2時ごろになると、バルはテラス席から徐々に埋まっていきます。日本なら昼下がりといった時間ですが、ここでは昼食前です。一般のオフィスは午後2時まで。官公庁やショップは午後3時までが一応“午前中”です。オフィスを出た人たちは、家に帰る(家で昼食をとります)前に仲間と会ったり、レストランでお昼を食べる友達と待ち合わせたりするためにバルに集まってきます。
そしてワインを一杯。ヘレスでワインと言えば、地ワインのシェリーです。まさにアペリティフ・タイムなので、フィノが主役です。
フィノで乾杯!そして始まるおしゃべり。スペイン人はおしゃべりです。無口だと思っていた人も、シェリーの最初の一口を飲んだ瞬間に、本当はおしゃべりだったのがバレます。一人でバルに入っても、だいたいカマレロが何かと話しかけてきたり、隣り合わせた人と話し始めたりで、何かしら会話が生まれます。好奇心の強いスペイン人にとって、バルは格好のコミュニケーションの場となっています。
日本ではカフェでカップルが隣り合って座っていても、それぞれが別々にスマホに見入っているという場面がよくありますが、スペインではあまり見かけません。一人の時はともかく、2人いればおしゃべりです。バルは、各店自慢のタパスをつまみながら飲み、相手の顔を見ながら話す場です。スマホは必要な情報をチェックするのに使ったりしますが、それ以上ではありません。
一杯のシェリーは食欲増進のアペリティフでもあり、楽しい会話増進のアペリティフにもなっています。スマホを置いて、シェリーのグラスを手に取れば、人生明るく楽しくなりそうな感じがしませんか? ヘレスのバルのおしゃべりスペイン人たちみたいに!
