シェリー 159 - おせちのエビにマンサニーリャ

日本のお正月におせち料理は欠かせません。おめでたい由来を持つ料理の数々を詰め合わせた華やかなお重のなかで、ひときわ目立つのが真っ赤なエビです。エビは「腰が曲がるまで長生きする」とか、「ひげを生やして腰が曲がったお年寄りに似ている」とか言われ、長寿を願う意味が込められています。
スペインでもお正月を迎えるパーティにエビが欠かせません。ただスペインの新年は教会でミサがあり、0時にスパークリングワインで乾杯しますが、クリスマスがキリスト生誕前夜の12月24日から年明け1月6日の「レィエス・マゴス(※)」まで続くので、大みそかは通過点で、完璧にクリスマス・モードです。
この間の正餐の主役は生ハムと子羊や子豚のオーブン焼きです。一家の主人は嬉々として生ハムを切り分け、キッチンからは肉の焼ける香りが漂ってきます。ここでテーブルの真ん中に登場するのがエビです。大皿に山盛りにされたエビに全ファミリーの感嘆の声!もちろん手づかみで豪快に食べます。
これは海辺の町での話ではありません。イベリア半島の中央にあり、海のないマドリッドも同じです。なぜエビなのか、スペイン人に聞いてみたところ、やはりキリスト教に関係していました。キリストが荒野で40日間断食したことにちなみ、敬虔な信者は断食するのですが、完全に食を断つのではなく、肉を食べないだけで、魚介類はお咎めなしです。そのため、キリストの生誕を祝うクリスマスにもエビに限らず、魚介類各種を食べるのだそうです。ただ最近はエビが楽に手に入るためエビだけのことが多いとか。そして生ハムも子羊も子豚もある正餐で、エビは完璧にアペリティフの役を担っています。
シェリーの世界ではエビと言えばサンルーカルです。アンダルシアを東から西に横切って大西洋に流れ込む大河、グアダルキビール川の河口にあるこの港町はシーフードの天国です。市場には毎朝生きのいいエビが並び、近くのバルでは、茹でたてのエビがつまめます。こんな時飲むのが同じサンルーカルの特産ワイン、マンサニーリャです。
ワインとしては、サンルーカルと並ぶシェリーの3大熟成地のヘレスやエル・プエルトのフィノと同じタイプですが、サンルーカルだけ熟成条件が特別だということでマンサニーリャ・サンルーカル・デ・バラメダという個別の原産地呼称を持っています。
その理由として、大西洋から吹いてくる湿気を含んだ涼しい風、ポニエンテをたっぷり受けられる条件でワインが熟成されることが挙げられています。
フィノやマンサニーリャのように、酵母の膜のもとで何年も熟成させるタイプのシェリーには、酵母が良い状態で生き続けてくれる環境が必要です。そのポイントがポニエンテです。熟成庫は海に向って窓や扉が開くように作られています。昼間、太陽光線が強い時間は熱い空気が入らないように窓も扉も締め切り、日が落ちて涼しくなると全開にしてポニエンテを入れ、上に昇った暖かい空気を熟成庫の上部にある窓から追い出します。空気の自然な動きを利用した賢い換気法です。
というわけでしっとりした大西洋の風を受けて育つマンサニーリャはフィノよりソフトで塩っぽさが感じられ、フレッシュなエビにはピッタリです。現地でもマンサニーリャはエビの友と言われています。日本のおせちのエビにもマンサニーリャをぜひどうぞ!
