シェリー 158 - パロ・コルタドで〆(シメ)

2025年、日本は猛暑や線状降水帯に襲われた大変な1年でしたが、シェリーの里「ヘレス」も気候変動の波が押し寄せ、想像もできなかった被害を被りました。
シェリーの産地は年間降水量600㎜程度で、雨は収穫後からブドウの樹が芽吹く前までぐらいに降り、それ以後、気温40℃は普通という夏の間、雨は降りません。ところが今年、ピカピカのお天気の日が続くはずの5月、まさに線状降水帯のような大雨に見舞われました。ヘレスの町の中心部が浸水し、通りは川のように水があふれ、大騒ぎでした。けれども、前年まで4年間干ばつが続いていたため、ブドウ畑にとってはありがたい雨だと言われていました。ところが、これがもとでミルデュウというカビ系の病気が発生し、今年は収穫が30%減少しそうだという予測が出されていました。
その上、夏になると、これも予想外の異常気象に襲われます。通常は、昼間は強い太陽の光が降り注ぐものの、夜は気温が下がり、海風と夜露で空気もしっとりするというサイクルで、ブドウは糖度や水分のバランスが取れた状態で熟していくのですが、今年は違いました。夜も暑さは続き、涼む間のないブドウは水分を失い、重量が減ってしまいました。けれども糖度は上々の12.5%。ワインとしては悪くないですが、結局、今年の収穫量は、なんと前年の45%減にまで落ち込んでしまいました。
ただ、スティルワインの場合その年の収穫量が直接生産量に反映されるかもしれませんが、シェリーは少し違います。クリアデラとソレラのシステムで熟成されるため、毎年できる新しいワインがすぐに出荷されるわけではありません。新しいワインは冬の間に酒精強化され、将来シャープな辛口のフィノになることが期待されるグループとフルボディのオロロソになるグループに分けて、樽に移されます。けれども、これは熟成システムに組み込まれているクリアデラではありません。その前の予備熟成段階で、ソブレタブラと呼ばれ、状況チェックが続けられます。
その際、フィノ予備軍の中に、これはちょっと違うと思われるワインが発見されることがあります。すると、その樽は抜き出され、ワインはアルコール度を少し上げることによって、表面を覆っていた酵母の膜が完全に消されます。ここから、このワインは空気に触れ、酸化熟成という別の道を辿ります。フィノのマークである1本の斜線(パロ)がカットされた(コルタド)、パロ・コルタドというタイプの始まりです。
パロ・コルタドとして熟成を始めたワインは、そのシステムに組み込まれ、クリアデラを何段か経て、最終熟成樽ソレラに至り、出荷されていきます。かつて、パロ・コルタドは酸化熟成中のワインの中からたまたま発見される希少なタイプで、アモンティリャドの香りでオロロソのボディを持つと表現されていました。
今では、前記のように、意図的に生産されていますが、独特の繊細な香りと複雑味のあるエレガントなスタイルが、他とは一線を画する特別なワインであることに変わりはありません。計画的に造ることができるとはいえ、熟成期間は12年とか15年、もしくはそれ以上が普通で、出荷量は大変限られています。パロ・コルタドは経てきた熟成年数なりの深みやコク、豊かさが感じられる大人のワインと言っていいでしょう。冬の夜、1年を振り返りながら、ゆっくり飲むのには最高のタイプです。
