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シェリー 157 - アモンティリャドの季節

シェリー 157 - アモンティリャドの季節

 秋が深まってくると、シェリーも深みのあるタイプが美味しく感じられるようになります。料理もしっかりした味のものが増えてきます。そんな時、お試しいただきたいのがアモンティリャドです。  
シェリー統制委員会の表現を借りると「トパーズから琥珀色のエレガントなワイン。香りは繊細でエレガント。」そして「口当たりは柔らかで、酸とのバランスが良く、複雑みと旨みが口に広がったあと、ドライなフィニッシュ。長い余韻にはナッティさとワインが染みた樽木のような香り。」とのこと。スッと通った骨格を豊かな風味が包み込んだような、エレガントな辛口ワインです。  
アモンティリャドは数あるシェリーのタイプの中でも唯一、2つの異なる熟成工程を経て、その両方の特性を身に付けた、特異なタイプです。  
もとはキリッと辛口タイプのフィノかマンサニーリャ(以後フィノで統一)です。フロールと呼ばれる酵母の膜のもとで、空気に触れず、何年か樽熟成され、その間にツンとした香り、シャキッとした骨格、シャープな口当たり、残糖ほぼゼロという完璧な辛口特性を身につけます。その後、フロールが自然消滅するか酒精強化によって消されるかで、ワインの酸化が始まります。もとの白ワイン色は徐々に褐色化。樽の木目から水分が蒸発するため、ワインが持っている成分が凝縮することによって、複雑味とボリューム感を増していきます。こうして時間をかけて出来上がるのがアモンティリャドです。  
ただアモンティリャドの中にもいろいろなタイプがあります。その要素の一つはフィノであった期間と酸化熟成期間との割合です。単純な例として、総熟成期間が同じ10年のアモンティリャドがあったとします。一つはフィノだった期間が3年で、酸化熟成期間が7年です。もう一つはフィノだった期間が7年で、酸化熟成期間が3年です。フィノだった期間が長い方が、シャープな特性が際立ち、酸化熟成期間が長い方が色も濃くフルボディになります。ただ、熟成地の違い、同じ町でも、そのどこに熟成庫があるか、さらには熟成庫のどこに樽が置かれていたかによっても違います。極め付きは各樽が自分の世界を持っていると言えるのがシェリーで、それがシェリーの面白さの一つでもあります。  
ちなみにヘレス・デ・ラ・フロンテラの町の中心から少し南西側(海側)に位置するゴンサレス・ビアス社のアモンティリャド「ビニャAB」は総熟成期間12年で、そのうちフィノの期間が4年、酸化熟成期間が8年です。一方同じ町でも中心の東側(内陸側)にあるルスタウ社の「ロス・アルコス」は総熟成期間8年で、フィノの期間が4年、酸化熟成期間が4年です。機会があれば、ぜひ比べてみてください。  
かつてはその微妙な違いを表現するフィノ・アモンティリャド、アモンティリャド・フィノという言葉がありました。フィノ・アモンティリャドはアモンティリャドがかったフィノ、アモンティリャド・フィノはアモンティリャドとしては軽やかな状態です。いずれも公式なタイプ名ではありませんが、アモンティリャド好きの心をくすぐる表現です。  
美食の秋。アモンティリャドは、肉料理はもちろんのこと、アーティチョークを始め、野菜に合うと言われています。シェリーの産地でもステーキに焼き野菜が添えられていることがありますが、アモンティリャドとはベスト・ペアリングの一皿です。

明比 淑子 氏