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シェリー 156 - シェリーが酒精強化ワインでなくなる?!

シェリー 156 - シェリーが酒精強化ワインでなくなる?!

 シェリーはワインです。ワインの3つのカテゴリー、スティル、スパークリング、フォーティファイドのうち、フォーティファイド、つまりアルコールを添加して度数を上げた酒精強化ワインに分類されています。  
昭和28年(1953)に国税庁が制定した現行の酒税法(※1)で、スティルワインとスパークリングワインは「果実酒」に、シェリーは「甘味果実酒:果実酒に糖類又はブランデー等を混和したもの」に分類されました。フォーティファイドの仲間であるポートやマデイラは甘口なので当然かもしれませんが、基本が辛口のシェリーが「甘味果実酒」と言われても…。果実酒の定義は、果実を原料として発酵させたもの(アルコール分が20度未満のもの)もしくは果実に糖類を加えて発酵させたもの(アルコール分が15度未満のもの)です。シェリーのアルコール度は15〜22%(※2)です。スティルワインもスパークリングワインもアルコールがほぼ20%であっても果実酒で、15%で辛口のフィノが甘味果実酒に入れられて、高い税金を課せられるのは(※3)、シェリー・ファンとしては納得いきません。  
けれどもこの状況は、少なくとも酵母の膜のもとで熟成されるフィノ・タイプに関しては、今にも変わろうとしています。現在(7月末現在)、シェリー産地が2022年に出した、ブドウ果汁の発酵だけでアルコール度15%に達するワインは酒精強化なしでもシェリーと認めるという決定をEUが承認するのを待っている状態です。けれどもシェリーの産地の生産者は既に“未来のシェリー”を造っています。そしてシェリーの原産地呼称統制委員会も承認後の対応準備は万端です。今年の7月に日本で行ったセミナーではこの造り方をした製品を2点、試飲に提供しています。  
一つはボデガ・デ・フォルロングのラ・フルール 2019です。ラ・フルールは収穫したブドウをアソレオと呼ばれる天日干しを48時間行って、果汁の糖度を上げ、もともとシェリーを熟成させていた樽に入れ、自然発酵させた後、フロールのもとで4年間樽熟成させたものです。アルコール度は15%。自然な度数です。  
もう一つはボデガ・ルイス・ペレスのカベルビアです。こちらは実が十分糖度を増すまで待って収穫したブドウを使い、発酵後、フロールのもとで樽熟成させます。単一収穫年のワインを何年分もキープしていて、その中からこのブランドに適したワインをいくつか選び、ブレンドし、平均熟成年数3〜4年のワインとして出荷しています。アルコール度は14.7%です。  
酒精強化しなくても適度なアルコール度があれば、フロールは良い状態で生育します。これは1970年代まで地元で使われていた手法です。同じくアンダルシア州で、内陸にある原産地呼称モンティーリャ・モリーレスが好例です。内陸性気候のため寒暖の差が激しく、ブドウの糖度が上がるので、自然にアルコール度が14%以上のワインができるため、酒精強化なしでフロールのもとで熟成するフィノが造られています。こういった酒精強化しない、アルコール度低めのフィノ・タイプのワインを推す動きは、学会にもあり、カディス大学やコルドバ大学も科学的な裏付けを持って推奨しています。この地の伝統的なワイン造りを見直し、テロワールを表現した新時代のフィノ造りに力を入れる生産者に注目です。

明比 淑子 氏