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シェリー 154 - シェリーのテロワール

シェリー 154 - シェリーのテロワール

 最近、ワインは生産地だけでなく、使用するブドウの畑の土壌や栽培方法など、いわゆるテロワール情報がたくさん付いているケースが増えています。  
テロワールはフランス語でterroir。その意味の一つは土壌。つまり土地がどんな種類の土で出来ているかです。けれどもワインのテロワールには土壌だけでなく、地理、地形、気候、畑を囲む環境、人的影響、そして歴史まで、幅広い範囲が含まれます。  
シェリーの場合、これまではテロワールに関してあまり深く説明されてきませんでした。もちろんこの地域独特の真っ白な土壌“アルバリサ”、つまり“炭酸カルシウムを多く含み、水分を保持する力に優れた、真っ白な石灰質土壌” の説明は不可欠でした。ただ、シェリーは他のワインとは違って、ブドウ果汁が発酵を終えてワインになった後の行程に、酒精強化やクリアデラとソレラの熟成システムがあり、長く複雑なため、こちらに重きが置かれてきていました。  
けれどもシェリーはワインです。白ワインや赤ワインと同じように畑のテロワールも出来上がったシェリーの風味に反映されているはずです。ということで、最近シェリーも「パゴ」を名乗るメーカーが増えてきています。  
パゴというのは畑の区画のことです。同一のテロワールで括られるブドウ畑の一区画と考えればいいでしょう。シェリーの産地では古くからパゴの認識がありました。特有の地理的条件や土壌を持った一つのパゴで栽培されるブドウで造られたシェリーは明らかにその個性を持っていたため、条件の違うパゴのシェリーとは区別されていました。この考え方は18世紀には既に確立していて、書物に記されています。  
2015年、シェリーの原産地呼称統制委員会はパゴの区画をはっきり示して認定しました。単一パゴのブドウを85%以上使った製品はパゴの名前を名乗れることになっています。  
ただ、シェリーの場合、クリアデラとソレラのシステムで熟成するため、ソレラを設定した年からずっと同一のパゴのブドウを使っていないと成立しないのではないかと思います。この条件を満たして、現在パゴを名乗っているのが、バルデスピノのフィノ「イノセンテ」と、そこから生まれるアモンティリャドの「ティオ・ディエゴ」です。  
パゴの名前はマチャルヌド・アルト。100以上あるパゴの中で最も質の高いアルバリサ土壌で、最も高い標高にある区画です。海抜135m。いつ行ってもかなりきつい海風が吹いているのが印象的です。この地点にはキリスト像が立てられています。  
バルデスピノは現在ホセ・エステベス・グループの傘下にありますが、もとのオーナー、バルデスピノ家は13世紀から続く、シェリーのメーカーとしては最古参でした。ホセ・エステベス社はバルデスピノ家の長いシェリー造りの歴史を踏襲し、マチャルヌド・アルトのバルデスピノ家の畑を維持し、ワインの発酵は樽で行い、フィノは10年熟成し、アモンティリャドは自然に産膜酵母が消えるのを待って熟成システムに補充する方式を取っています。この環境を維持するのも大変な仕事です。  
シェリーのテロワールはパゴやブドウ栽培の行程だけでなく、熟成行程までも含まれると解釈した方がいいかもしれません。

明比 淑子 氏