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シェリー 150 - カテドラルかモスクか

シェリー 150 - カテドラルかモスクか

 シェリーの熟成庫、ボデガ(Bodega)はカテドラルに例えられることがよくあります。カテドラルはキリスト教で教区を納める司教の座がある教会のことを指します。カトリックの国スペインでは、少し大きな都市にはカテドラルがあるといった感じです。シェリーの町、人口20万人を超すヘレスにもカテドラルがあります。その内部のイメージとしては天を表す高い天井とそれを支える高い柱、その間に低く整然と並べられた信者用の椅子。  

シェリーの熟成庫は、その他のワインとは違って、地上の巨大な建造物です。中は高い天井、それを支える何本もの高い柱、整然と積まれた樽の列。これがカテドラルに例えられる理由です。  

ではなぜこんなスタイルなのでしょうか。先ず、大量の樽を常時収納しておかなければならないという事情があります。シェリーは最低2年樽熟成しなければいけないという、他のワインよりはるかに長い樽熟期間が定められています。しかも独特のクリアデラとソレラの樽熟システムでは、100年以上も前から使われているものもある古い樽が常に3〜4段に積まれ、壊れない限り何10年でもずっと同じ場所に置かれています。しかも樽1つの容量は500〜600ℓ。そんな樽の列が何列も並んでいます。  

そして大きなポイントは、シェリーの中で最も生産量の多いタイプであるフィノとマンサニーリャが熟成するのに必要な、微生物である産膜酵母が良い状態で生育していける環境の保持です。求められる条件は湿度70%ほど、気温10数度から20℃位。ボデガの構造は、夏は涼しく冬は暖かく、しっとりした空気に包まれた環境作りを自然の力を利用して可能にしています。天井の高さは10mから15mを超えることもあります。大きな樽ですが、積まれた樽の高さはその半分にも至りません。暖かい空気は上昇してこの巨大な空間に至り、地面のレベルから積んである樽の位置には涼しい空気が保たれます。上に溜まった暖かい空気は、夜、海側の壁の高い位置にある窓を開けて、涼しく湿気を含んだ海風を取り入れることによって、反対側の窓から追い出します。太陽が昇る前には窓を閉めて、熱気の流入を遮断します。  

さらにボデガの真っ白な外壁にも意味があります。シェリーの産地はヨーロッパで一番南に位置するワイン産地です。年間300日は晴れ。夏の気温は40℃に至ります。年間降水量は600㎜ほどですが、秋冬以外雨は降りません。夏の暑さ対策の1つとして、太陽光を反射するために壁を真っ白に塗っているのです。この壁は厚さ60㎝から1mぐらいまである分厚いもので、断熱効果もあります。  

実用目的で出来上がったスタイルですが、その景観は大変美しく荘厳なためカテドラルに例えられるのも納得できます。そんななか唯一イスラム教の寺院、モスクに例えられるボデガがあります。それが「フンダドール」社のメスキータ(モスクのスペイン語)という名を持つボデガです。1730年創設の「ペドロ・ドメック」社所有時代に建てられたものです。イスラム寺院式のアーチが立ち並ぶ壮大な光景が、ユネスコ世界遺産認定のコルドバのメスキータを連想させるため、こう呼ばれています。  

カテドラルかモスクか。いずれにしろ他のワイン産地に例を見ない巨大なワイン熟成庫がエコなシステムで稼働しているのは素晴らしい事実です。

明比 淑子 氏