酒と思索の迷宮『いつもの宵の、酔い語り』第62夜

備蓄米購入はギャンブルか!
私は米の価格高騰に腹立てて、「米断ち」を先月から実行している。そして、その連続日数はカレーライスが唐突に食べたくなって断たれてしまった。これは先号で報告の通りだが、その後も順調に私の米断ちは「コメ離れ」へとトーンダウンしてはいるが進んでいる。
そんな最中、ひょんなことから政府備蓄の(古古古?米)を入手した。その突然の幸運が極めて嬉しかったので今月も米の話をさせていただきます。
私の住む静岡県は、地方で括れば東海地方。日本でも米の値段が最も高い地域だ。最安の地区からは5kg比で1,000円も高い。JAの権勢ぶりと中間搾取業の問屋が日本でも最も蔓延っている地区ということである。その上、備蓄米の随意契約をした流通業者の販売網の眼からもこぼれ落ちているから、備蓄米販売のニュースは他県からは1ヵ月以上遅れ、さらに販売店も極めて少ない。つまり、私のような世情に疎い者の手にはまず入るはずがないのである。
私の市内で販売されたというTVニュースでは、開店の6時間も前から並んで整理券を貰うのも四苦八苦。で、開店の2時間前には事実上の売り切れとなる。こういう状態で、全国の5kg2,000円前後の(正常)価格で米を買いたい人々の、およそ何%が入手できるかを考えたら悲惨な数値しか思い浮かばない。しかもたったの1家族5kgである。私が諦めていたのもご理解いただけよう。
金額にして3,000円安く入手するために、6時間も並ぶという効率の悪さを無視してでも並んで買おうとする人々の、涙ぐましい努力の真意は、最早、経済的理由だけではなく、米高騰への義憤に駆られてのことではあるまいかと私には思えてならない。
私の「コメ断ち」は1歩後退して「コメ離れ」となってしまったが、特別な欲求にでも見舞われなければこのまま続けてみようと思っている。が、その矢先、通販大手のamazonに各種ブランド米に混じって政府備蓄米が掲載されている、という話を聞き込んだ。
本当ならば有り難いと思って半信半疑でページを開いてみる。と、まさか!と思ってはいたが、間違いなく備蓄米5kgが掲載されている。で、私はとっさにポチった。しかし、支払い手続きに移ると「この商品の在庫は現在ありません」が表示されて、「やっぱりな!」となる。予想はしていたからガッカリ感はなかったが、悔しさは残った。
無い!となると余計に欲しさが募る。説明では入荷し次第販売するとある。コメ離れ中の下級町人の私としては、気持ちの半分はどうでも良いようなものなんだけれども、備蓄米に快哉を叫んだ一国民としては、一度は入手してみたい気持ちはあって、以降、パソコンを開く都度、amazonの備蓄米をポチることにした。
そしてトライすること6回。ついにコンプリート。備蓄米は漸く我が手に入ることとなったのである。支払い完了。1,944円也。私はプライム会員だから送料は無料。値段もさることながら、多くの人々が早朝から数時間も並んでやっと手に入れる米が、単にパソコンの操作だけで買えた。この嬉しさは一体何なんだろう。
子供の頃に駄菓子屋のクジで、特大の飴玉が当たった時のような、極めて単純、かつ晴れ晴れしい嬉しさが込み上げてきた。で、この瞬間、不思議なことに私の胸中からは米の存在はほぼ消え去っていたのである。米は最早どうでも良くなっていて、クジ運と博才だけには壊滅的に恵まれていない私が、“賭けに勝った”という歓びだけが湧き上がったのだった。
これが所謂ギャンブルの持つ「麻薬的射幸心」というのだろうか。現代社会の風潮としては、偶発的に射幸心を煽る物事は軒並みギャンブル視されてNG的な認識である。
にもかかわらず、私は2匹目のドジョウを求めてポチリ続けているのであります。以降、全戦全敗。射幸心は博才皆無の私には訪れては来ない。ヒクリともない!