私の「美味しい」が、誰かの「福」になる

お酒というものは、その味わいや造り手のこだわりを楽しむだけでなく、時に誰かとの思い出や大切な時間を鮮やかに彩ってくれる特別な存在だと思う。日本酒が大好きな私にとって、その象徴と言えるのが、茨城県の「来福・純米吟醸・山田錦」だ。
このお酒との出会いは私が入社したての頃のことだった。まずは数あるお酒の名前を覚えようと、必死にリカーズをめくっていたとき、たくさん並ぶ写真の中で、パッと目に飛び込んできたのが、かわいらしいピンクのラベルだった。その愛らしさに強く惹かれ、自分で買い求めたのだが、自宅で口に含んだ瞬間に雷に打たれたような衝撃を受けた。
グラスから立ち上る、おひさまのように温かく華やかな香り。そして、山田錦ならではのふくよかなお米の旨味と、すっきりとした綺麗な甘みが口いっぱいに広がっていく。普段から多くの日本酒を楽しんできた私にとっても、その味わいは特別だった。ひとりでその感動的な余韻に浸りながら、「こんなに素晴らしいお酒があるのなら、自分だけで楽しむのはもったいない。いつか誰かに、この美味しさを味わってほしい」と強く心に思ったのを覚えている。
その機会は、それから間もなく訪れたお正月の集まりだった。歳の近いいとこが、めでたく二十歳を迎えたのだ。大人の仲間入りを果たした、人生の大きな節目。本人から「日本酒が飲んでみたい」というリクエストがあり、親戚一同が集まるおめでたい席で何を贈ろうかと考えていたとき、私の頭に真っ先に浮かんだのが、あの日に自分が惚れ込んだ「来福」だった。「福が来る」というこれ以上ないほど縁起の良い名前も、大人の道を歩み始めたばかりのいとこの門出にぴったりだと確信した。
お正月の賑やかな雰囲気の中、私は心を込めて選んだその一本をいとこに手渡した。まだお酒の味に馴染みのないいとこは、少し照れくさそうに、それでも「ありがとう」と本当に嬉しそうな笑顔を見せてくれた。自分が惚れ込んだ最高の味が、大切な人の新しい門出を祝福する架け橋になったことが、自分のことのように誇らしくて嬉しかった。
あれから月日が流れ、今でも私は「来福」を飲むたびに、あのお正月の温かい空気といとこの嬉しそうな笑顔を思い出す。自分が美味しいと感動した記憶が、誰かの人生の節目を彩る贈り物になり、今もこうして温かい思い出として私の中に生き続けている。これこそが、このお酒が私に運んでくれた、何よりの「福」なのかもしれない。
庄司酒店M