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データで読み解くインバウンドの「飲食・酒」考現学 vol.7

データで読み解くインバウンドの「飲食・酒」考現学 vol.7

Welcome×安心の“方程式”

ニッポンの“酒場”への興味が広がっています。訪日客たちにとってナイトタイム消費、とくに飲食(酒場)シーンでは「商品+α=文化体験」が強いインセンティブです。しかし、現実は「酒場(スナック、バー)に興味あっても」、「よく分からないので」NGという声も多いようです。前号に引き続き、現場で起こっている異文化摩擦の事情にフォーカスしました!

参考資料: 観光庁「訪日外国人消費動向調査」2025年/Japan Ticket(2026年版インバウンド集客コラム)/総務省「サービス産業動態統計調査」2025年 /他Webサイト情報(飲食店ドットコム、ぐるなびPRO、現代ビジネスコラム、PR-Timesなど)

View1. 訪日・旅行消費支出の実態と傾向

「一括り」に出来ない消費支出・飲食の傾向

✓オーバーツーリズム気味なインバウンド市場。実際は上表のとおり、 訪日客を一括りにできない訪日動機が見られます。量的には韓国 942万人、中国800万人がメガ市場ですが、1人当たり消費支出(円) では豪州39万、米国34万、シンガポール32万と欧米勢が上位客です。 中国も消費額、数とも以前として高い状況です。

✓飲食店にとってアジアと欧米の訪日客の嗜好は、実利or体験など目的 やニーズの差もあり、その対応も欠かせなくなっています。

✓現在、飲食店売上の約1割を占めるインバウンド市場。中でも“酒場”は 外国語メニュー以前に「何の店か、費用はいくらか、自分が入れるか」 などが伝わることが売上機会が左右される時代になりました。

“酒場”を「選ぶ」ときの不安・心配の正体

✓店選びは、「良さそう」という気持と「失敗したくない」というリスク 回避を併せ持ち、その不安や心配には下記のケースが挙げられます。

㋑何の店か分からない
スナック、バーなど外観だけでは「飲む所」「会話を楽しむ所」などが分からないので興味があっても敬遠されがち。

㋺料金の「先」がイメージ出来ない
チャージ、席料、サービス料、セット料金など未知の世界。「費用いくらになる?」という不安=心理的ハードルが高い。

㋩「歓迎されるかどうか」が不安
外国人OK、言語以上に「自分が入って場違い」かどうかが心配、店内が見えない小さな店はなおさら。

㋥「店ごと」のルールが分かりにくい
注文と支払方法、喫煙、席選び・利用法など「知らずに入り」「失敗したくない」という気持が第一。
 

不安や心配の原因は、言語より「メニュー、料金やサービスが一目瞭然」 という初動的なことが挙がっています。

View2. 「入らない」と「入る」の心理状態

なぜ、「その店の扉を開けた」のか?

✓「ニッポン人オンリー?」や「店内が見えない」などの疑問や迷いから 貴重なお客様を逃していることも多いようです。そのため、「ここなら 歓迎されそう」、「安心できそう」が感じられる店頭サイン(多言語 「歓迎」や写真付きメニュー、料金等)が第一となります。

✓入店をためらいがちなスナックでも、外国人向けスナックツアー(ガイド 付き)では、店のママや常連客 との会話、カラオケなどが 「楽しい!」と人気上昇中です。 スナックという未知の“酒場” がニッポンの魅惑的なナイト カルチャー体験の小さな舞台 になっています。

なぜ、「その店の扉を開けた」のか?

「入りたくなる」店の共通点

✓「出会いの瞬間」をいかに上手に活かすかも大事になっています。店頭 にはメニュー、料理の写真だけでなく、店主・スタッフ・客席や楽しんで いる様子なども見せることで、「誰が・どう過ごす・楽しめる」店かを 伝えることができます。このことが、「扉を開ける」モチベーション アップにつながるはずです。

✓実際にインバウンド対応で見直すべき点は、言葉(多言語)以外でも 不安を少なくし、安心感を示すことが基本スタンスになります。それぞれ の店(スナック、バー等)の特徴を表すサイン(表札風)、店内やメニューが 分かる写真・イラストなど見せる工夫が効くことも実証されています。

✓訪日客それぞれのニーズを察知しながら、「入ってみたい」という動機 に応える情報(入口)の見える化、バージョンアップも、大切ではない でしょうか。

訪日客にほぼ共通する心理は、「入りたい店」を探す、というより「安心して入れる店」を選ぶ傾向が見られます。そこで大事なのは店頭でのwelcome感(サイン)の伝え方、商品メニューの料金表示など接客以前のサービスで、「扉を開けてもらう」というファーストコンタクトの瞬間です。「どう不安を解消」し、「扉を開けてもらうか」などの解決策へのヒントになれば幸いです。

View3. Welcome(店)×安心(訪日客)

気持が通じる歓迎(Welcome)サイン

✓ニッポンの“酒場”の強みは高級から大衆まで、この両方が狭いエリア に共存し、文化体験できることです。

✓Welcomeサインが単なる翻訳よりも、店側が「外国人歓迎」の姿勢を どう伝えるか、理解してもらうかにかかっています。

✓特に繁華街や路地裏のスナックやバーは店内が見えにくいのが当たり 前だがらこそ、上記のような一言が、訪日客が抱く気持を先回りして 不安を和らげる、ナイトカルチャーが楽しめる「許可証」のような役割 を果たすことにつながります。

ナイトカルチャー(スナック、バー)の関心度

✓スナックやバーに対する訪日客の関心は“酒場”というより、ママや マスターとの会話と常連客との交流。カラオケなど狭い空間自体が 海外にはなく、ニッポンでしか味わえない場所であり、文化的なコン テンツになっています。

✓外国人向けスナックツアー事例では、さらに「ディープな日本を知り たい」というニーズが背景にあり、スナック体験・利用者は居心地の良さ、 ニッポンならではの業態(酒場)として人気となっています。この実態は 料飲店にとっては注目すべきであり、応用できる点もありそうです。

✓売るべきものは「ウイスキー1杯」だけではなく、その店にいる30分、 1時間のニッポン体験。地方の小さなスナック、バーなら、なおさらこの 状況やニーズは追い風だと思います。スナックではママ/地元客と交流。 バーはマスター/酒・ストーリー/地域色/クラフトなど、ある意味 “幕の内弁当”のような多彩さが関心の背景になっているようです。

View4. 今からできるActionテーマ

異文化の“距離感”が魅力に変わる

✓スナックやバーの入店前のマイナス要因にもなる異文化の摩擦問題 が魅力へ変わるケースも見られます。なぜ「お通し」が出る、「店主をママ と呼ぶ」、なぜ「知らない客同士でカラオケを歌う」など、ニッポンでは 当たり前のことでも訪日客には貴重、かつ記憶に残る体験という見方 があります。

✓“酒場”としては、外国人に合せる、海外に似せるのではなく、異文化の 違いを正確に適切に伝えることが問われています。ちょっとした工夫 (一言)が、「分からない」から「面白い」へと変える引き金にもなります。

立飲みから、スナックやバーの共存が観光資源

✓訪日客にとって、入店時の安心材料や素になるのは型通りの情報では なく、知らない人が共通に抱く疑問に応えることが基本スタンスと 言えます。既に紹介したとおり、「ここは何の店?」、「料金はいくら?」、 「誰でも入っていい?」、「どう楽しむ?」、これらの疑問に応える姿勢と 案内情報がセットで伝えることが肝心かと。

✓他方、飲食店スタッフの意思疎通、サービス関連の多言語表示等の問題 は依然として訪日客との摩擦の背景です。扉の内側にある魅力を安心 に応える情報とともに伝える。この小さな改善が「気になるが入らない」 というネガティブ面が「入ってみよう」というポジティブ面に変化する はずです。

✓結局、入店前の「不確実性を減らす」姿勢が営業、サービス上の可能性 をより広げることにもなります。数ある“酒場”(業態)は一つの文化の 体験空間として、今、世界から注目され新たなチャンスの時期を迎えて います、それぞれの個性を活かした“酒場”がより広く、深く訪日客の目 に留まることに期待します。

こちらの特集は、『コミュニケーション科学研究所』のご協力のもと調査。社名の通り“コミュニケーションを科学する”視点を持ちながら、調査研究をしています。
あらゆる分野において膨大な情報より分析・解析がされ、その実績は多岐にわたります。