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シェリー 163 - シェリーの起源と未来

シェリー 163 - シェリーの起源と未来

 シェリーには3000年の歴史があります。紀元前1100年、地中海の東の端を拠点とする海洋貿易に長けたフェニキア人たちが、大西洋に出て、西洋で最も古い町といわれるガディール、現在のカディスに到着し、ブドウ栽培とワイン造りを伝えたとされています。ただ、その証拠を目で見たという人に会ったことがありません。  
シェリーの生産地域内では、ヘレスの近くにある小高い丘にフェニキア人の遺跡があり、そこにはラガールというブドウ踏みをするスペースと果汁が流れ落ちて溜まるスペースが考えられた石造りの設備があるので、なるほど紀元前3〜4世紀にここでワインが造られていたのだと納得できます。  
けれども、カディスの場合はストラボンというギリシャ人の地理学者・歴史家・哲学者が紀元前1世紀に書いた全17巻から成る『地理誌』にある記述が頼りで、目に見える遺跡がありません。そこでカディスの考古学遺跡博物館に行ってみました。一番古い遺跡は紀元前9~8世紀にフェニキア人によって作られた石造りの狭い通路、そして壁などの住居跡でした。続いて紀元前8~6世紀のころの建造物。その後は紀元前後のローマ時代のものです。  
キッチンはあるのですが、ラガールがありません。フェニキア時代のものとはいえ、住宅街的雰囲気なので、ラガールは町の外にあったかもしれません。ということで博物館の方に伺いました。 「スペインのワインの歴史は紀元前1100年、フェニキア人がカディスにブドウ栽培とワイン造りを伝えたことから始まるのですが、ラガールの遺跡はありますか?」  
「いい質問です!」と言われましたが、残念ながら答えは「発見されていません」でした。紀元前4〜3世紀に、ヘレスの近くの遺跡の丘まで海が届いていたとしたら、それよりはるかに大西洋内に突き出ているカディスで、ブドウはどこに植えていたのかも、とても気になっています。「遺跡、探しておいてください!」とお願いしてきました。  
ワインはブドウから生まれるので、ブドウなくしてワインはあり得ません。最近の異常気象で、ブドウ栽培条件もどんどん変化しているため、ワインを確保するためにはどんなブドウをどう栽培したらいいかが大きな関心事になっています。  
何年か干ばつが続いた時よく言われていたのが地場品種は強いということでした。シェリー用ブドウ品種と言えば、辛口はパロミノ、甘口はペドロ・ヒメネスとモスカテルと決まっていました。栽培量の95%以上はパロミノです。けれどもそれは19世紀末に到来したフロキセラという壊滅的害虫被害から復活するに当たり、取捨選択された生産効率の良い品種です。  
今、地球温暖化、気候変動に対応すべく、昔は使われていた地場品種を復活させ、ワイン造りに取り入れようとする努力が始まっています。  
紀元1世紀頃に生まれた、カディス人のコルメラは『農業論』という著書で、何世紀もの間ヘレスで続けられてきたブドウ栽培について記しています。当時使われていたブドウ品種は何だったのか、こちらも気になります。  
3000年前から現在、未来につながる歴史ロマンに浸りながら飲むには、出来るのに時間と手間がかかるアモンティリャドがいいでしょうか。

明比 淑子 氏