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お酒とマナーのマリアージュ 第10回

お酒とマナーのマリアージュ 第10回

 皆さま、新年あけましておめでとうございます。  
お酒とマナーのマリアージュへようこそ。

新年の一杯  
新しい年を迎える1月は、人と人の距離がもっとも近くなる季節です。帰省や再会、仕事始めの挨拶など、顔を合わせて言葉を交わす場面が増えます。お店の中にも、どこか、明るく前向きな空気が流れます。そんな節目のひとときをそっと支えてくれるのが「新年の一杯」です。  
日本は、古くから、お屠蘇で一年の無病息災を願う風習があります。最近は、スパークリングや日本酒、ビール、ノンアルコールなど、それぞれのスタイルで新年を祝う方が増えています。大切なのは、お酒の種類ではなく「今年もよろしくお願いします」という思いを、所作として届けることにあります。  
例えば、グラスや盃を受け取るとき。相手の方に体を向け、両手でていねいに受けると、その瞬間に自然と気持ちが整い、表情もやわらぎます。乾杯の時は、すぐに口をつけず、一拍おいて相手の目を見る「間(ま)」をつくることで、「今年もよい年になりますように」という願いを共有する時間へ変わります。

新年のご挨拶  
ここで、飲食店としての“新年のご挨拶”について触れてみましょう。 「明けましておめでとうございます」は、一般的に松の内(まつのうち)までの挨拶です。松の内とは、門松を飾る期間のことで、関東では1月7日、関西では15日までと言われています。それ以降は、
•「今年もどうぞよろしくお願いいたします」
•「本年もご来店ありがとうございます」
•「本年もよろしくお願いいたします。どうぞごゆっくりお楽しみください」
といった柔らかい表現にすると、年始らしい落ち着いた雰囲気になります。  
また、年始の会食や集まりの場では、
•「初春のお集まりに、当店をお選びいただきありがとうございます」
•「よい時間になりますように。何かございましたらお声がけください。」
•「皆様のお集まり、すてきですね」
といった言葉が喜ばれます。  
お客様の多くは「良い一年にしたい」という思いを胸に来店されます。だからこそ、こうした温かいひと言が、普段以上に心に残る季節でもあります。

そしてまなざし  
新年の挨拶では、言葉とおなじように、“まなざし”も柔らかく届きます。「今年もよろしくお願いいたします」とお客様にお伝えするとき、丁寧に目を合わせるだけで、声にあたたかさが加わります。料理をお持ちする時も、お客様の方へ軽く視線を向けるだけで、「大切にされている」という安心感が生まれます。派手な演出ではありませんが、新年の空気に寄り添う、小さなひと工夫です。  
私の体験をご紹介します。  
航空会社で乗務していた頃、元旦の便では乗務員が着物で「お屠蘇サービス」をしていた時代がありました。「いつの時代の話?」と笑われそうですが、新年らしい華やぎがありました。  その後は、時代とともに年始の演出も変わり、決まったサービスがあったわけではありませんが、紙コップのスパークリングワインをお渡ししながら「本年もどうぞよろしくお願いいたします」とお声かけすることもありました。ほんのささやかなひとときですが、その一杯をきっかけに、見ず知らずの方どうしが「ハッピーニューイヤー」と声を掛け合い、機内にふっと明るい空気が生まれる瞬間がありました。  
華やかな演出でなくても、新しい一年を同じ場所で祝う“気持ちの共有”には、不思議と場をやさしく変える力があります。飲食店で交わされる新年の乾杯にも、きっと同じ温かさがあると思います。  

新年の一杯は、人と人との気持ちをそっと近づけてくれるものです。  
皆様にとって、穏やかで、実り多い1年でありますように。  
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

【 豆知識 】
世界の「あけましておめでとう」
最近は、インバウンドといわれる海外からのお客様が増えています。発音が完璧でなくても、歓迎の気持ちが伝わると、印象はぐっと良くなります。
・英語 Happy New Year
・中国語 新年快乐(シンニェン クワイラー)
・韓国語 새해 복 많이 받으세요(セヘ ボッ マニ パドゥセヨ)
・フランス語 Bonne Année(ボナネ)
・スペイン語 Feliz Año Nuevo(フェリス アニョ ヌエボ)
・イタリア語 Buon Anno(ブオン・アンノ)

愛甲香織