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お酒とマナーのマリアージュ 第4回

お酒とマナーのマリアージュ 第4回

 皆さま、こんにちは。お酒とマナーのマリアージュへようこそ。  
夏の訪れとともに、グラスの中で立ち上る”泡“が恋しくなる季節がやってきました。グラスの中で立ちのぼる粒、きらめきながら弾ける音、口にしたときの軽やかさ―  
ビールやシャンパーニュの泡は、味わいと気分の両方を盛り上げてくれる「ときめき」の象徴です。  
今回は、そんな泡にまつわるマナーやエピソード、そして、思わず誰かに話したくなる豆知識をお届けします。

シャンパーニュの泡は、語る泡  
シャンパーニュの泡は、静かに、そして優雅にグラスを昇っていきます。泡が細かくまっすぐ上るものは、時間をかけて丁寧に熟成された証。まさに品質を物語るサインです。お客さまに「熟成期間が長く、泡がとても細やかです」と一言添えれば、グラスを眺める時間もまた、特別な体験になります。

〈開け方と注ぎ方のマナー〉
シャンパーニュは「ポン!」と派手に開けるイメージがありますが、本来は、音を立てずに静かに開けるのがマナーです。その時のささやくような音は“天使のため息”とも表現されます。

〈開け方のポイント〉
• コルクの根元をしっかりもつ
• 親指で瓶口をしっかり押える • ボトルの底をもって、瓶を回す
• コルクが上がってきたら、静かに抜く

〈注ぎ方のポイント〉  
片手で瓶の底を持って注ぐのは、難易度が高め。無理をせず、両手で丁寧に持ちましょう。注ぐ時は、ラベルが相手に見えるように。泡が落ち着くのを待ち、2~3回に分けてゆっくり注ぎます。私も乗務員時代、勢いよく注ぎすぎて、お客様が思わずグラスに顔を近づけて、“吸って”しまったというシーンを幾度となく経験しました。  また、シャンパンのホイルやミュズレ(コルクを固定する金具)をすべてはがしたところ、先輩から「シャンパンが風邪ひく」と叱られたのも忘れられない思い出です。確かに、首元がむき出しだと、なんだか寒そうに見えてしまいますね。

ビールの泡は、“香りの守りびと”  
ビールの泡には、香りを閉じ込み、酸素から守り、口当たりをまろやかに整えるという大切な役割があります。泡がなければ、炭酸ガスは抜け、香りは飛び、味わいは平坦になってしまいます。  泡のキメが細かいほど、口当たりはなめらかになります。泡の状態は、ビールの鮮度を映すバロメーターでもあるのです。ドイツでは、理想的な泡を「神の泡」と称するそうです。

〈おいしいビールの注ぎ方〉
• 泡3:液体7の黄金比を目指す
• グラスは冷やし過ぎず、4〜6度が理想
• 最初は勢いよく注ぎ、泡を立てる
• 泡が落ち着いたら、静かに注ぎ足す。
• グラスに直接あてないよう注意する  
ただし、こちらも油断すると、泡があふれてしまいます。シャンパーニュと同様、「吸って吸って」となる場面には、十分お気をつけください。

〈泡の魅力と繊細な気配り〉  
泡は注いだ側から消えていく“はかない存在”です。だからこそ、注ぐ時の所作や温度管理、グラスの傾け方などの丁寧な気配りが、そのまま味わいに表れます。泡が立ちのぼるわずか数秒に、その場の空気や心遣いが映し出されるようです。  泡が消えても、心に残る一杯を―。そんな思いを込めて、お客様へ提供したいですね。  
ビールやシャンパーニュは、宴会や乾杯に欠かせない存在です。だからこそ、「注ぐ」という行為には、マナーとしての意味も込められています。

令和のお酌とふわりとした距離感  
かって“気配り”とされたお酌の文化も、時代とともに変化しています。相手の気持ちを汲まずに注ごうとする行為は、負担に感じられたり、セクハラに受け取られることがあります。  
令和の今、スマートなお酌とは、「タイミング」と「距離感」を大切にすること。注ぎたければ、「よろしければ注ぎましょうか?」と一言添える。断られたら、静かに引く― それもまた心地良い“間”を生む、洗練されたマナーです。  
泡のように、ふわりと寄り添い、さっと引く。そのさりげない所作こそが、これからのマナーの美しさなのかもしれません。

愛甲香織